日本の企業がLGBTフレンドリーを推進している理由

日本の民間企業でLGBTダイバーシティに取り組むところが増えてきています。
企業がLGBTに取り組む理由としては様々ありますが、大きく分けると2つです。

1つはマーケティング的な視点です。
LGBT当事者向けサービスを充実させることで、これまでリーチできていなかった層にもリーチすることができます。
具体的には、生命保険の受取人を同性パートナーに指定できるようにしたり、同性カップル用のウェディングビジネス、トランスジェンダーなどに向けた幅広いサイズ展開の服や靴などです。

もう1つは人材戦略的な視点です。
LGBTフレンドリー企業になることで、既存社員の従業員満足度が向上したり、優秀なLGBT人材の採用につながります。
具体的な取り組みとしては、LGBTに関する社内研修の実施、企業ポリシーにLGBTへの差別禁止を明記、同性パートナーを配偶者として認め福利厚生を利用できるようにする、性自認の服装や通称名の使用を認めるなどです。

マンパワーグループが実施した約5000人の当事者にアンケートでは、求職時に困難を感じると回答したLGBが40%、Tに関しては69%、約7割という結果がでました。また、職場で差別的言動があると答えた方は非当事者が40%だったのに対し、当事者は57%という結果が出ました。
この結果からはまだまだ日本のLGBTダイバーシティに取り組む企業は少ないと思われますが、今後取り組みをしていこうとしている企業は確実に増えています。

その理由の1つが、2020年の東京オリンピックです。
2014年にオリンピック憲章が改正され、差別禁止規定に性的指向が明記されました。
また、オリンピックの調達コードにも、LGBTへの差別禁止や人権を尊重することが明記されています。調達コードを守っている企業から、東京オリンピックに関わる物品やサービスなどを調達する必要があります。また、製品だけでなくその製造にかかわる関連企業もすべて調達コードを守っている必要があります。
このことから、多くの企業がLGBTフレンドリーになる必要が出てきています。

最近では、日本のメディアでもLGBTが取り上げられることが増えてきています。
まだまだ取り組みに関して過渡期であるために、賛否両論様々な意見が出ていますが、徐々に誰もが暮らしやすい社会へとなっていくことが期待されています。

変化する日本の同性愛

LGBT当事者orアライによるレポート。今回は変化する日本の同性愛です。

同性愛の歴史

明治以前の日本ではLGBTという言葉はもちろんありません。そのような概念もありませんでした。
しかし「同性愛」については現在よりも割合が高く、世間でも寛容であり、特に男と男が愛し合うことは異常なことではありませんでした。平安時代では親戚同士になった貴族が肉体関係になることは日常的のことでした。また、寺のお坊さんは女性との性的な関係が禁じられていたため10歳前後の男の子が対象となりました。戦国時代には織田信長や武田信玄などもそうだったと言われています。さらに江戸時代では「愛の交流会」と呼ばれるものが流行り、一般武士や町人のレベルまで広がりました。これは「男色」と呼ばれており、主に年上の男が年下の少年を愛するという行為のことです。宗教的にも日本で同性愛に対する規制も特になく、平然と受け入れられていました。

同性愛の禁止

しかし江戸幕府が倒れ明治維新が起こると、西洋文化が流入し、キリスト教の教えの影響で「同性愛禁止」の考えが徐々に日本でも広まっていき、「同性愛」を異常なものとみなすようになりました。
明治13年(1880年)には男色行為の一部が刑事罰の対象とされていた時期もありました。そのような規制は一時的なものではあったものの、そのような異性間の恋愛を尊重する風潮が続いており、現在でも世界の主流の考え方であります。その後、1990年代に入ると医学的にLGBTは障害ではなく、いかなる意味でも治療の対象にはならないと宣言しており、まだまだ一般的ではないものの2000年代に入ると芸能人がカミングアウトするなどの影響もあり、同性愛者への理解が進むようになりました。

まとめ

以上のように同性愛に関しては時代の流れが進むにつれて偏見が厳しくなってきました。つまり日本の文化でもあった「男色」が「良いこと」から「悪いこと」へと変化していったのです。このような事例からも日本という国は価値観が変わりやすい国民であり、流行に流されやすい国民だと思います。そのため今のこのLGBTに対する理解も早く進む潜在的な力もあると思います。時代に逆行して、「男色」を復活させ流行させるのではなく、「LGBTを理解する」という新しい価値観を広めていくことの大切さを感じます。

LGBTであるということをどう受け止めるか

LGBT当事者orアライによるレポート。今回は、LGBTであるということをどう受け止めるかです。

LGBTであるということを、1つの個性として前向きにとらえている人がいます。
その一方で、自身がLGBTに生まれた、またはなったことを恨む人もいます。

今回はLGBTである、ということをどう捉えるか、ということに関して書きたいと思います。

前向きに捉える

「ゲイに生まれてよかった」「FtMに生まれてよかった」などと思っている人がいます。
ストレートの人は「ストレートに生まれてよかった」とは思わないかと思います。(「LGBTに生まれなくてよかった」とは思うかもしれません)
LGBTであるということで、そうでなければ得られない何かを得た時に、LGBTでよかったと感じられると思います。
たとえばそれは、一生のパートナーが見つかったときかもしれませんし、当事者同士のコミュニティで素晴らしい体験ができたときかもしれません。

私自身は、LGBTという概念に出会い、自認したからこそジェンダーやセクシュアリティに対する興味をもったので、その点では、LGBTでよかったと思います。
セクシュアリティに関係なく、交友の輪が広がったことはとてもよかったと思います。
もちろん、辛いこともありますが、この自分が自分に生まれたということは変えられない事実であるので、変に落ち込んだり恨んでも仕方ないかな、と思います。

後ろ向きに捉える

そうは言っても、辛いことはあるかと思います。
性自認、性的指向どちらに関しても、なかなかストレートの人にとっては理解をしてもらえないことが多いです。
差別的なことを言われることもあるかもしれません。
日本人は特に同調圧力が強いですから、人と違う、ということが知られてしまったときに批判されることは多くあります。
特に家族や友人など親しい人に批判されると、居場所がなくなったように感じて辛いこともあるかもしれません。

最後に

人間である以上、他の人と全く同じということはあり得ません。
周りと異なっている点が必ずあります。
それを隠すか、ありのまま隠さずにいるかはその人次第です。
LGBTであるということは、他の特性に比べて目立ちやすいかもしれません。
私は、ジェンダーやセクシュアリティに関わらず、もっと一人ひとりが、お互いの違いを認め合い尊重しあうことが必要だと思います。
LGBTであるということは、いいことでも悪いことでもないと思います。
それとどう向き合うか、ということを意識すれば、明るく生きていけるのではないでしょうか。

日本の女子大でのトランスジェンダーの受け入れ

LGBT当事者orアライによるレポート。今回は日本の女子大でのトランスジェンダーの受け入れについてです。

2016年、アメリカの女子大が、生まれは男性の体だが女性として生きているトランスジェンダーの入学受け入れを決定しました。アメリカでは、すでに5校の女子大が受け入れを表明しています。

日本でも、トランスジェンダーで女子大学を希望する学生はいますが、認めている大学は現在ゼロです。
アメリカの女子大でトランスジェンダーを受け入れる流れを受けて、日本の女子大でもトランスジェンダーの受け入れが検討されると思われました。
しかし、2014年に実施された241大学へのアンケートでは、半数が「LGBTの学生から相談を受けたことがある」と回答したが、健康診断やトイレの使用などで「配慮をしている」と回答した大学は26%にとどまりました。このように、日本の大学はLGBTに対する配慮が欠けているというのが現状でした。

国内の女子大で、このままでいいのかという問題が意識されつつある中、日本女子大学がトランスジェンダーの学生を受け入れるかどうかの検討を(2017年の)新年度から始めることが決定しました。
これまでは、体の性が女性であることを前提に入学を進めてきた日本女子大学ですが、さまざまな性のあり方への認識が広がる中で、体の性が男性であるトランスジェンダーの方も受け入れる可能性が出てきました。
おそらくこの受け入れ検討は、日本の女子大で初めてのことで、歴史ある日本女子大学が検討を始めることで、他の女子大学にも大きく影響すると考えられます。

日本女子大学がこういった検討を始めることについて、トランスジェンダーの当事者から歓喜の声があがる一方、受け入れ態勢の構築を求める声もあがっています。
受け入れに対する課題はいくつかありますが、女子大の学生は、自由主義的な方たちが多い印象があるので、女子大からLGBTを支援しようという新たな風潮が生まれることや、Allyの人たちが増えることでLGBTに対する理解がさらに深まるといったところで期待できるのではないでしょうか。

LGBTフレンドリー活動としての「トイレの配慮」

LGBTという言葉が認知されるとともに、LGBTが直面する問題を解決しようと動きはじめた団体も増えてきました。
その中でも特に多いのが、トイレについての活動です。今回はこのLGBTとトイレの問題について書こうと思います。

特徴

現在多くの団体が取り組んでいるのが、既存の男女トイレとは別に設けてある、車いす用トイレなどの障がい者用トイレを、LGBTフレンドリーなものへ変更するものです。
まず、前提として勘違いされている場合が多いのが、トイレがLGBT全体にとっての問題のようにとらえられていることです。
LGBT4つの頭文字に関して言えば、男女どちらのトイレを使用するか、の問題になるのは、トランスジェンダーのみです。
メディアなどでは、LGBTに配慮したトイレ、などと書かれている場合がありますが、これは実際には語弊があるかと思います。
また、そのような既存の男女以外のトイレを、“誰でもトイレ”とする場合や、“ジェンダーフリートイレ”とする場合など名前は様々です。

残る問題

では、トイレの問題を抱えるトランスジェンダーは、車いす用トイレが使えることにより解決になるのでしょうか。
一概には言えないかもしれませんが、そうではないと思います。
男女のトイレと“ジェンダーフリートイレ”がある場合に、“ジェンダーフリートイレ”を使用するということは、実質カミングアウトになってしまいます。
しかし実際には、トランスジェンダー当事者や車いすの方以外にも、多目的トイレを利用する方はいます。
たとえばオストメイト(人工肛門保有者)など、見た目で健常者と変わりのない人がそのトイレを使用した場合に、「そこは車いすの人のトイレなのだから使用してはいけない」などと咎められる場合があるそうです。
そのような実態もあるために、車いす以外の人が多目的トイレを使うことが当たり前になるには、まだ時間がかかりそうです。

解決策

では、トイレ問題はどのように解決するのでしょうか。
1つとしては、“誰でもトイレ”になったそのトイレを、皆が積極的に使用することだと思います。トランスジェンダー当事者以外が使うことによって、使用する=カミングアウト、ということはなくなるかと思います。

しかし男女トイレと違い数が多くないため、本当に必要としている人が使用しにくくなる、という批判はあります。
他に、そもそもトイレに男女の区別をなくす、という考えがあります。これは、どちらのトイレを使用するか悩む人にとっては解決策に成り得ますが、トイレが性犯罪の場となっている現状もあるため、それがさらに悪化するのではないかという懸念があります。
本人が望む性別のトイレを使用することを認める、ということが理想ではありますが、上記と同じで、トイレ内で性犯罪をたくらむ人が存在していることが問題です。

最後に

外出先でトイレを使用するという行為が、苦痛であったり問題になるということは、多くの非当事者にとっては想像しにくいことかもしれません。
車いすトイレをLGBTも使用可能にする、ということで問題が解決すると思わずに、実際に当事者の意見を取り入れながら、さらによい方向へ問題解決へ向かっていってほしいと思います。

個性としてのLGBTを考える

LGBT当事者orアライによるレポート。今回は個性としてのLGBTを考えるです。

LGBTを尊重しようという動きが大きくなる中で、「LGBTであることはその人の大切な個性の1つだから」という声があります。
今回は、「LGBTであること」は個性なのか、について考えます。

個性とは

個性という単語を辞書で引くと、「ある個人を特徴づけている性質・性格。その人固有の特性。パーソナリティー。」(大辞林 第三版より)と出てきます。
他人とその人が区別される一つの性質を表すというイメージかと思います。

LGBにとって

個性という認識を、LGBTの中でも性的指向に関わるLGBと性自認に関わるTに大きく分けて考えてみます。

性的指向の部分でセクシュアルマイノリティである場合、恋愛の面以外においてはストレートの人となんら変わりはありません。
つまり、恋愛においてその人は個性を持っているということです。

LGBの中にも、誰にも言えずにクローゼットで生活している人もいれば、フルオープンな人もいるように、個性として前向きに捉えているかは人それぞれですが、私は、それは個性の1つだと思います。
ストレートの人の中でも、どんな異性がタイプか、という部分は個性であると言えるのではないでしょうか。
また性的指向のマイノリティの中には、ノンセクシュアルやアセクシュアルも含まれますが、それも個性だと思います。しかし恋愛し、性行為をするのが当たり前のようになっている社会では、個性ですと前向きに捉えることは難しいかもしれません。

Tにとって

トランスジェンダーにとって自分がトランスジェンダーであるということは、前向きに捉えることは難しいかもしれません。
MtFとFtM、もしくはそれに近いXジェンダーの人にとっては、生まれる性別が自認する性別であったとしたら、悩みは多くなかったでしょう。
トランスジェンダーであったからこそ、たくさんの交友が持てた、というようないい面はあるかと思います。
しかし、MtFは女性として、FtMは男性として、他の多数と同じように生きることを望む人が多いです。その場合はトランスジェンダーを個性として持ち続けるのを望むことはないでしょう。

その個性をどうするのかは自由

LGBTであることは、多くのストレートとその人が異なっている部分ですから、個性と言って間違いないかと思います。
しかし個性という言葉は、「個性を大切にしよう」「個性を磨いて、活かしていこう」など、オープンに、ポジティブに捉えていきましょう、というような文脈で使われることが多いです。
私はその必要は必ずしもないかと思います。
他のストレートの人と同じように生活すること、いわゆる埋没を望むトランスジェンダーの人は、個性だからとおおっぴらにすることはないでしょうし、その他のセクシュアリティの人でも、それをどうするかはその人次第です。
「個性なんだからもっとアピールしていこうよ」と言われることもありますが、その人が望むように、生きるのが一番ですね。

台湾、同性婚実現まであと一歩

台湾は、アジア初の同性婚合法化が実現されるかどうかで、ずっと注目されてきました。
nijipiでも以前状況をお伝えしていますが、昨日新たな動きがありました。
同性婚実現まで、あと一歩の段階まで来ているようです!

台湾の最高司法機関、司法院の大法官は、24日、同性婚を禁止する規定は、すべて違法であるとしました。
現行の民法は、婚姻の規定について、同性間の規定を排除していて、これは憲法の保障する、人民の婚姻の自由と平等に反しているということです。
そのため2、3年以内に、当該の法律は修正される見通しです。

合法化までには2年ほどかかる見通しですが、それまでに結婚を申し出る同性カップルがいれば、婚姻届の受理はするとのことです。

台湾のLGBTについての活動をけん引してきたのは、祁家威という男性です。
自身がゲイであることを自認している彼は、1986年にカミングアウトをしたのち、同性愛者の人権問題や、エイズの治療について、活動を行ってきました。
2013年には実際に台北市へ男性パートナーと共に婚姻届を提出していましたが、当時は受理されませんでした。それ以降も同性婚合法化に向けて地道に活動を行ってきたことが実り、今回の判決となりました。

台湾の総統が現在の蔡英文になって以降、彼が同性婚支持を公に言い続けていたこともあり、今回の段階まで至ったということです。
去年末に提出された民法の修正案では、条文の中の“夫妻”“父母”など異性同士を前提とした単語は、性別に中立な“双方”“配偶”などに変更するよう書かれていました。
この修正案は現在審議中とのことですが、今回の判決をきっかけに動き出す可能性が高いようです。

今後同性婚の実現に向けて動きがさらに加速する見通しですが、どのような形で進んでいくにしろ、立法院の受理が必要になります。
アジア初の同性婚に向けた、今後の動きに、注目していきたいですね。

参照: 禁止同性结婚违宪 台湾大法官做出判决( http://www.bbc.com/zhongwen/simp/chinese-news-40026323)

LGBTインタビューvol.8 日本オラクル株式会社

2017年3月から同性パートナーシップ制度を始められた日本オラクル株式会社さん。LGBTダイバーシティを推進することになったきっかけは、2015年に社員主導で発足したLGBTアライと当事者のコミュニティ「OPEN」の活動でした。
今回は、OPENの設立メンバーである、赤木眞理子さんと川向緑さんにお話を伺いました。

赤木眞理子さん(写真右)
日本オラクル株式会社
カスタマーサポートサービス統括 E-Business Suiteサポート本部 生産管理サポート部 部長

川向緑さん(写真左)
日本オラクル株式会社
コーポレート・シチズンシップ プログラム・マネージャー

赤木さん、川向さんはコミュニティ「OPEN」の設立メンバーとのことですが、まずはコミュニティ発足のきっかけを伺えますか?

私たちの元同僚にLGBT当事者の方がいました。彼はフルオープンで、私たちも他の社内のメンバーも特別視することなく、とても自然に接しており、それが当たり前でした。

彼は転職をしたのですが、転職後に亡くなってしまいました。
お葬式に参列した際、転職先の職場ではセクシュアリティをオープンにしていなかったことを知りました。

あるときSNSでやり取りしている際に「自分のようにオープンにできる当事者は少ないから」と言っていたことを思い出しました。
当時はLGBT当事者が存在することを当たり前のことだと認識していましたが、日本ではまだまだこのような社風というのは珍しいのだということを認識しました。

お葬式の帰り、私たちにも何かできることはないかという話になり、これがきっかけでコミュニティが発足されました。
そのときはまだLGBTやアライという言葉も知らなかったです。

コミュニティの最初の活動はどのようなものだったのでしょうか?

当初メンバーは4、5名で、LGBTについて学ぶことから始めました。
それぞれが本を読んだりセミナーに参加するなどして学び、学んだことをランチ会などで共有し合いました。勉強をしていく中でアライという言葉を知り、お金を出し合ってアライシールも作りました。

あるとき、アメリカ法人の同僚に相談したところ、アメリカには既にLGBTのコミュニティ「OPEN」があるということを教えてもらいました。日本ではまだ活動していなかったので、私たちも「OPEN」として活動しようということになりました。

現在、日本のOPENにはアライとLGBT当事者どちらも在籍していますが、カミングアウトは強制するものではないので、誰が当事者であるかは明確にはしていません。

現在、OPENの活動はどのようなことを行われていますか?

メンバー同士で情報共有を行うランチ会の実施や、社内メンバーに向けたお昼の時間のセッションの開催、管理職向けの研修の企画や運営をしています。
社内セッションは、自社のカフェスペースを使ったり、メールで告知するなどもしています。
また、今年はTOKYO RAINBOW PRIDE 2017にも出展しました。

▼TOKYO RAINBOW PRIDE 2017のブース前にて。当日はパレードにも参加した。

4、5名のメンバーから始まった活動が、現在では会社全体としてのLGBTダイバーシティの取り組みになっています。何かきっかけはあったのでしょうか?

人事のメンバーに2015年の秋に行われたwork with Prideに参加してもらったことが大きかったと思います。
会社全体にこの活動を広げていきたいと話している頃、work with Prideの事前ワークセッションが行われることを知りました。本来は新規での参加はできなかったのですが、主催の方に私たちの想いを伝えたところ、参加を認めてもらえました。
社内への浸透に重要だと考え、カンファレンスには是非人事のメンバーにも参加してほしいと伝え、参加してもらうことにしました。

人事のメンバーはwork with Prideで初めてセクシュアリティをオープンにしているLGBT当事者と会い、話を聞いたそうです。
「実際に会ってみたら普通の人たちだし、もし会議で隣に座っていても気が付かないだろう、もしかしたら同じ部にもいるのかもしれないと感じた。当事者の言葉で働く上でどんなことに困っているのか聞くことができた」と話していました。
これがきっかけでLGBTダイバーシティは必要だと改めて感じてくれたようで、その後の社内研修の実施や、同性パートナーシップ制度の導入などにも繋がっていきました。

御社では2017年1月に同性パートナーシップ制度を導入されましたが、これはどのようなものでしょうか?

LGBT当事者が安心して働ける福利厚生制度にすることを目的に、制度を改訂しました。
同性カップルや事実婚などの関係にある社員も、法令で婚姻関係にある社員とほぼ同等の福利厚生制度が適用されるようになりました。
具体的には、慶弔金や育児・介護休職、家族を対象とした病床休暇、企業負担の加入保険などに関しては、ほぼ同等水準に拡充しました。
同性パートナーを申請する際には、法令で婚姻関係にある社員に求めている以上のものは求めていません。

管理職向けのセミナーも開催されているとのことですが、これはどのような内容でしょうか?

全管理職向けにLGBTに関する集合研修も行っています。
研修の企画にはOPENのメンバーも関わっており、人事や研修講師の方などと議論を重ねて企画しました。
こだわったポイントとしては、ロールプレイングです。例えばカミングアウトする側とカミングアウトを受ける側に分かれて話をしてみるなどです。ロールプレイングをすることで、自分事として考えられるようになり、「カミングアウトって緊張するんですね」といった声が挙がっています。

研修を実施する前と後でアンケートを実施しているのですが、「LGBT当事者と働くことについて」の質問で、研修後は「抵抗がある」という回答がほとんどなくなります。
このことからも研修を実施することの効果を感じています。

その他に、LGBT当事者の働きやすさを考慮した取り組みはありますか?

セクシュアリティを理由に差別を行わないことを公式サイトのダイバーシティ&インクルージョンのページ で発信しています。
また、以前は男女別の服装規定があったのですが、現在は男女に分けずに記載しています。通称名やトイレの使用に関しても、要望があれば対応する予定です。

その他には、LGBT専門の相談窓口を設置しています。
相談の対応は人事とOPENのメンバーで行っています。それぞれのメールアドレスを社内で告知し、誰に相談してもよいようにしています。
相談者のプライバシーを守るため、お互いに相談があったことは共有しないようにしています。

LGBTダイバーシティを推進する上で、社内の理解を得られず悩むという企業さんもあるのですが、御社の場合はどうでしたか?

弊社の場合は反対意見はなかったです。もともと企業ポリシーにダイバーシティ&インクルージョンが含まれていること、既にアメリカではLGBTダイバーシティの活動を行っていたこと、社員が自発的に動くことを応援する社風であることが大きいかと思います。

最後に今後取り組んでいきたいことについて伺ってもよろしいでしょうか?

まだまだ試行錯誤中なので、取り組みたいことはいろいろあるのですが、今は東京のみで行っているコミュニティ活動を、各拠点でも行っていきたいです。相談窓口に関しても、相談に応じることができる相談員を育成していきたいです。

こうした活動を行うことで、最終的にはコミュニティがなくなることが理想です。
コミュニティの活動がなくてもLGBT当事者がインクルージョンされている職場になれば実現されるのではないかなと思っています。

ありがとうございました!

編集部より
社内のコミュニティ活動が発端となって会社としてLGBTダイバーシティを推進している日本オラクルさん。
コミュニティ発足から、様々な取り組みを開始するスピードが速いなと感じました。
元々社風として取り組みやすい環境であったとのことですが、やはり新しい取り組みを始める際には強い想いやリーダーシップが必要です。
今回インタビューでお話を聞き、赤木さん川向さんの強い想いを感じることができ、だからこそここまでスピーディーにダイバーシティが推進しているのではないかと感じました。

札幌市パートナーシップ宣誓制度、6月1日より開始

札幌市パートナーシップ宣誓制度が6月1日より開始されることとなりました。

同性パートナーシップ制度とは?

日本の自治体で導入されている同性パートナーシップ制度は、多様性を認め合う街づくりの一環として、自治体が同性カップルを「パートナー」として認め、証明書などを発行するものです。
日本では同性婚は法的に認められていないので、同性パートナーシップ制度は婚姻とは異なり、法的な効力はありません。

日本では2015年に東京都渋谷区・世田谷区が導入し、その後三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市と続き、北海道札幌市は6番目となります。
札幌市では元々4月開始予定でしたが、市民への理解を促進する期間を設けることとなり、2カ月延期をしての導入となりました。

札幌市のパートナーシップ宣誓制度とは?

札幌市のパートナーシップ宣誓制度では、パートナーであることを札幌市に宣誓し、市がそれを受領するというもので、世田谷区などに近い制度です。

▼参考「渋谷区と世田谷区の「パートナーシップ制度」何が違うの?」

渋谷区と世田谷区の「パートナーシップ制度」何が違うの?

札幌市はパートナーシップ宣誓制度について以下のように発信しています。

概要
性的マイノリティの方の気持ちを受けとめる取組として、お二人が互いを人生のパートナーとして、日常生活において相互に協力し合うことを約束した関係であることなどを札幌市長に対して宣誓をする制度です。お二人の宣誓に基づき、宣誓書の写しと市長名の宣誓書の受領証を交付します。

対象
次の全てに該当する、一方又は双方が性的マイノリティのお二人。
・双方が20歳以上であること。
・市内に住所を有する、または、市内への転入を予定していること。
・双方に配偶者がいないこと及び他にパートナーシップの関係にないこと。

宣誓の方法
・宣誓する日時を事前に電話等で調整
・必要書類を揃え、予約した日時に二人で来庁(場所 札幌市役所本庁舎13階男女共同参画課)
・市職員の面前で確認書と宣誓書を記入
・市から「宣誓書の写し」と「宣誓書受領証」を交付

必要書類
・住民票 各1通
・独身を証明する書類(戸籍抄本など) 各1通
※いずれも3ヶ月以内に発行されたものに限ります。

※来庁時には、免許証など本人確認ができるもの(官公署が発行した顔写真付きのものに限ります)が 必要になります。また、確認のため写しをとらせていただきます。

http://www.city.sapporo.jp/shimin/danjo/lgbt/seido.html

すでに9組が予約

札幌市では5月18日よりパートナーシップ宣誓制度の手続きの予約が開始され、すでに9組が予約申し込みがありました。

これまで同性カップルには事実婚状態であってもそれを証明するものがありませんでした。同性パートナーシップ制度には法的効力はありませんが、自治体という公的な機関が二人の関係性を認め、書類を発行してくれるということに、喜びを感じる同性カップルも多いようです。

今後も札幌市のように同性パートナーシップ制度を導入する自治体は増えていくのでは、と考えられています。

「無意識の偏見」を減らそう。メルボルンの信号表記が女性に

オーストラリアの都市メルボルンの歩行者信号が、女性のマークに変わりました。
オーストラリアの120以上の団体からなるNPOのメルボルン委員会が、この活動を行っています。

オーストラリアの歩行者用信号は、日本と同じように赤と緑の人がそれぞれ「止まれ」と「わたってもよい」を表しており、通常の信号の場合ズボンを履いた「男性」が使用されています。

今回の変更についてメルボルン委員会の代表マーティン・レッツ氏は、今回の女性マークの信号の導入に関して、以下の発言をしています。
「信号機の人間を女性にすることで、気付かぬうちに人間の表象に男性を使用している現状の“無意識の偏見”を減らす目的がある」
「メルボルンは、世界一住みやすい都市と思っているが、さらに私たちはメルボルンを、世界一平等な都市と世界に言えるようにしたい」


拠出 http://www.abc.net.au/news/2017-03-07/green-female-crossing-signal/8331320

この活動で6つの信号機が変更されたそうですが、およそ8400ドル(約70万円)かかっているそうです。
この活動で、何か大きな変化が急に起こるわけではありません。しかし、世の中の人間のシンボルにはほとんど男性が使われているという“気付かぬ偏見”に疑問をもつことで、人口の50%いる女性に関心をもつきっかけになると言います。

人を表す単語としてmanが使われることなども含め、男女関係ない場面で人間が表現される際には男性が使用されるのがほとんどです。
そもそもスカート=女性でズボン=男性と決めつけてしまうのはどうかという批判もあります。
このニュースに関する声の中で、「そもそもなんで人のマークを使っているんだ? 歩く/歩くな と書けばいいだけの話じゃないか」と言うものがありました。

実際にこの信号機で大きな問題が起こるわけでも、平等がすぐに実現されるわけでもないでしょう。
しかし上記の声のように、今まで当たり前だった「男性がスタンダードであること」に疑問を持つ人が増えること、それがこの活動の大きな意味ではないでしょうか。