「本物のトランス」という考えがあることについて

LGBT当事者orアライによるレポート。

LGBTの中でも、トランスジェンダーはさらに細分化されるセクシュアリティです。MtFとFtMが大きなカテゴリーとしてあると思いますが、その中でも性別適合手術を受けるかどうか、受けるならどの段階まで受けるのか、という部分で分かれます。その中で起こっている問題について今回は取り上げます。

「本物のトランス」という概念

トランスジェンダーの中には、冒頭でもあげたように、どの段階まで性別移行を望むかは人によってさまざまです。男女によって細かくは異なるかと思いますが、手術の前の段階ですと異性装やホルモン治療、手術になると、生殖機能を取り除いたり、性器や乳房の切除、望む性別の性器の形成などが当てはまります。

MtFやFtMと大きなくくりで言っても、どの段階まで進んでいて、どの段階まで最終的に望んでいるのかはそれぞれ異なります。その中で、手術により身体も見た目も完全に望む性別に移行した人、もしくはする予定の人を、本物のMtFやFtMと呼ぶ人が存在します。

「偽物のトランス」がいるのか

本物と呼ばれる人がいるということは、偽物が存在しているということでしょう。この基準に当てはめれば、ホルモン投与のみを行っている人や、何も治療を行っていない人は、本物のトランスジェンダーではないということになります。

また、私は実際にお会いしたことはありませんが、自称MtFやFtMなどのLGBTを名乗り、当事者との性的な接触を迫る人が存在しているということは聞いたことがあります。セクシュアリティはストレートであるのに、このような理由からLGBTを自称している人は、もちろん偽物でしょうし、存在してはいけないことだと思います。

しかし、本人の性自認がMtFやFtMであるのであれば、それは周りが本物か偽物かと評価することはできないのではないかと思います。

実際に判断するのは難しい

費用や時間の面、また社会的な規範の中で、すべての人が自認している性別へ身体的に完全に移行できるとは限りません。

また、トランスジェンダーであることを自認する時期が遅いと、それも偽物と批判する声もありますが、いつ自認するかは人によってさまざまなので、偽物と決めつける理由にはならないかと思います。(特に、年齢の高い方だと、昔はLGBTに関する知識を得る機会が少なかったために、自認するきっかけが多くなかったことも理由かと思います。)

性的指向の部分や、さらに曖昧な概念であるXジェンダーの人を含めて、その人がLGBTかどうかを周りが判断するのは、極めて難しいことです。

大事なのは、「個」を尊重すること 

そもそも、男女の規範にならった異性愛前提の規範に、当てはまらないことにより不満や心地悪さを感じているのがLGBTの人の多くだと思います。

現在の日本社会における男女の規範にならった異性愛前提の規範から漏れた人が、LGBTとしてくくられているのに、その中でさらに、「この人は本物のLGBTではない」と追い出してしまっては、同じことの繰り返しになってしまうでしょう。

LGBTの問題に関わらず、大事なのは個々人を認め合うことです。周りからはそうは見えなくても、その人がパンセクシュアルであると言えばパンセクシュアルですし、トランスジェンダーと言うならトランスジェンダーです。

ただ、上にも書いたように、性的な目的やビジネス目的から、LGBTを自称する人が存在しています。一部にそのような人が存在しているのはとても悲しいことですが、そのような人が一定数いるということに気をつけて、人付き合いをしていくしかありません。

最後に

私は、LGBTだからみんなで仲良くしようという意見を言うわけではないですし、実際それは不可能だと思っています。大事なのは、セクシュアリティに関係なく人と関われることだと思います。もちろん同じセクシュアリティの人同士は共通点から仲良くなれることは多いと思いますが、自分と違うからと言って、偽物だと批判するのは絶対に間違っていると思います。

LGBTもそうではない人も全員が生きやすい社会になるためにも、過度に自分と違う人を干渉しすぎず、尊重できる形が理想ですね。