20歳、性同一性障害と向き合っていくこと 後編

LGBT当事者もしくはアライによるレポート。今回はトランスジェンダー当事者のレポートの後編です。

前編はこちら

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カミングアウトのタイミング

とても仲の良い友達には高校に入るころくらいから少しずつ伝えてはいましたが、周囲全体に隠さなくなったのは高校3年生の頃です。

カミングアウトを決意したのには、自分の中で治療のことを考え始め、性同一性障害について調べていく中で当事者の啓発活動が大切に感じる節が多々あったからです。

嫌だと思うこと、男子として扱われたいことはあったけど言わなかったことが私を苦しめていました。

でも、周囲からしたら伝えなければそんなことはわからないですよね。カミングアウトすることはとても怖かったし、勇気のいる行為でした。

幸いなのか、周囲の友達やバイト仲間に偏見や差別のある人は少なく、バイト先では通称名の使用許可していただけて、少し気持ちが軽くなりました。
両親とは、ぶつかる時期もありましたが、時間をかけてお互いの気持ちを理解し、お互いに受け入れて過ごすことができています。
なので、今現在カミングアウトをしてオープンに生きていることに後悔はしていません。

社会に求めること

20年の人生の中で、必要に思ったことはカミングアウトのしやすい環境です。自分の想いを伝えられるかどうかでその人の人生は大きく変化すると思います。

私自身、オープンにしてからはとても楽になったし、劣等感を感じなくなりました。
カミングアウト前まではなんでこんな風に生まれてきたんだとかマイナスなことばかり考えていました。
ですが、カミングアウト後からはこの障害あっての今の自分なんだと思えるようになったし、だからこそできることに取り組もうと前を向けるようになりました。

今は、ブログを通して当事者や友人に思っていることや治療内容を伝えより理解を深めてもらえるように努力しています。
この先まだまだ問題はあると思いますが、一歩ずつ着実にセクシャルマイノリティが当たり前に認められる社会になればよいと思います。

20歳、性同一性障害と向き合っていくこと 前編

LGBT当事者もしくはアライによるレポート。今回はトランスジェンダー当事者のレポートです。

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私は、性同一性障害者(FTM)です。
現在は大学に通っており、バイトをしたり遊んだりごく普通の大学生活を送っています。ですがやはり常日頃から考えていること、興味のあることはジェンダー関連、特に性同一性障害の問題についてです。

私の性自認

私は物心がついたころから性別へ違和感を持っていました。

なんで自分は女の子なのだろうか、男の子として過ごすことは許されないのだろうか毎日考えていました。

女の子として過ごすことで嫌な思いをたくさんしてきました。制服のスカートや赤いランドル、女子トイレや女子更衣室の使用、男女の席順わけ、さん・ちゃんで呼ばれること、両親など周囲の人から言われる「女の子なんだから~」と女の子らしい振る舞いを求められることなど挙げたらきりがありません。

好きになるのは女の子で、男の子として好きになってほしい、男として扱われたいと日々思っていました。
思うところはたくさんありましたが、きっとおかしいことなんだ、誰かに言っていいことではないんだと何となく思っていたので、誰かにカミングアウトすることもなく、我慢の日々を繰り返していました。

性同一性障害は第二次性徴期が一番辛い

第二次性徴期は、大体10~16歳ごろ(個人差有)です。

身体の性差が表れ始め、性への関心が高まり、男女間でお互いの性を意識しだす頃になります。
そして生殖機能、つまり生理が発現する時期です。心とは裏腹にだんだんと女性的な体つきになっていくことがとてもつらかったです。
胸の発達・初潮など死にたくなるほど嫌でした。

男子とはどんどん体格差が広がり、比べてしまうことで羨ましさと屈辱感が生まれました。カミングアウトすることも出来なかったので、全て心の中に留めることでより辛かったんだろうなと今では思います。

後編へつづく

FTMの働き方。自衛隊での体験。

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LGBT当事者もしくはアライによる「セクシュアリティ」に関するレポートを紹介するシリーズ。
今回はFTM当事者であり、陸上自衛隊に入隊した方のレポートです。

自分らしく仕事ができると期待したが…

私はFTM当事者です。高校を卒業し私が選んだ道は、男性主体で尚かつ公務員である陸上自衛隊に入るという選択でした。
入隊試験を経て、無事合格。入隊式を終え、自衛隊こそ自分らしく仕事に専念できる環境であると信じて期待していました。

しかし、いざ自衛隊員としての生活が始まってみると、想像とはまるで違いました。
完全なる男女別での行動。女性自衛官として特化した教育。
同じ自衛官であるにもかかわらず通称(女性陸自隊員をワックという)まで違い、この職場環境に私は愕然としてしまいました。

公務員という職業は、国という大きな組織の下にあり、決して我々性的少数者(セクシュアルマイノリティ)が生きやすい職場ではないということに、私はそこでやっと気が付いたのでした。

上司に相談しても、「前例が無いから」「正直よくわからないから」「そういう面倒なことは隠しておいた方が良い」などと全く相手にはされず、寧ろ煙たがられているのがハッキリっと感じられました。
しかし自分が選んだ職業をそう簡単に投げ出すわけにもいかず、悶々とした日々を送っていました。

お前はお前らしく堂々と胸張って仕事すればいい

そんなとき、一人の先輩が「お前はお前らしく堂々と胸張って仕事すれば良い」と声をかけてくれました。
そこで私は、前例が無いのなら自分が初めての例になって微力ながらもこの組織に何らかの風穴を開けてやろうと決意したのでした。

私が思うに、日本人ならではの特徴がLGBTを受け入れる体制作りを阻んでいるのだと思います。
郷に入れば郷に従え。
人権の尊重といいながらも、「出る杭は打たれる」という全くもって個性を殺してしまう固定観念の色眼鏡。男性は雄々しく女性は淑やかに。女らしさ男らしさという考え方。このように数えればキリがないほどの固定観念で固められた人々の頭は非常に固く、日々自分の性認識について説明し続ける日々でありました。

しかしながら個人が説明をするのではなく、組織として現状を受け入れ、人権などの教育にLGBTのことに関しても含めるべきだと強く感じました。
そして集団生活の中にも、こうした性的少数者(セクシュアルマイノリティ)への配慮として、多目的トイレの設置や個別のシャワー室の利用ができるようにする等、できることは山ほどあるように思います。

その中でも最も重要であると思うのは、1人1人の理解の広がり、偏見の払拭だと思うのです。
国の傘下にある公務員こそ、積極的にこの問題に取り組むべきであり、国全体として理解ある社会づくりの代表的な組織であってほしいと思うのです。

この国の全ての企業や組織におけるLGBTへの理解と知識を深める機会を増やすことが非常に重要であり、この国が一歩前進できる素晴らしいきっかけとなってくれることを切に願います。

編集部より

今回は自衛隊で働くことを経験したFTM当事者の方のレポートでした。
まだまだLGBT当事者にとって、働きやすさが整っていない環境があるのも事実…。しかし、この方のように理解ある先輩と巡り合い、自分らしい働き方を目指している方の言葉は、LGBT当事者にとっては勇気になるのではないでしょうか。