FTMの働き方。自衛隊での体験。

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LGBT当事者もしくはアライによる「セクシュアリティ」に関するレポートを紹介するシリーズ。
今回はFTM当事者であり、陸上自衛隊に入隊した方のレポートです。

自分らしく仕事ができると期待したが…

私はFTM当事者です。高校を卒業し私が選んだ道は、男性主体で尚かつ公務員である陸上自衛隊に入るという選択でした。
入隊試験を経て、無事合格。入隊式を終え、自衛隊こそ自分らしく仕事に専念できる環境であると信じて期待していました。

しかし、いざ自衛隊員としての生活が始まってみると、想像とはまるで違いました。
完全なる男女別での行動。女性自衛官として特化した教育。
同じ自衛官であるにもかかわらず通称(女性陸自隊員をワックという)まで違い、この職場環境に私は愕然としてしまいました。

公務員という職業は、国という大きな組織の下にあり、決して我々性的少数者(セクシュアルマイノリティ)が生きやすい職場ではないということに、私はそこでやっと気が付いたのでした。

上司に相談しても、「前例が無いから」「正直よくわからないから」「そういう面倒なことは隠しておいた方が良い」などと全く相手にはされず、寧ろ煙たがられているのがハッキリっと感じられました。
しかし自分が選んだ職業をそう簡単に投げ出すわけにもいかず、悶々とした日々を送っていました。

お前はお前らしく堂々と胸張って仕事すればいい

そんなとき、一人の先輩が「お前はお前らしく堂々と胸張って仕事すれば良い」と声をかけてくれました。
そこで私は、前例が無いのなら自分が初めての例になって微力ながらもこの組織に何らかの風穴を開けてやろうと決意したのでした。

私が思うに、日本人ならではの特徴がLGBTを受け入れる体制作りを阻んでいるのだと思います。
郷に入れば郷に従え。
人権の尊重といいながらも、「出る杭は打たれる」という全くもって個性を殺してしまう固定観念の色眼鏡。男性は雄々しく女性は淑やかに。女らしさ男らしさという考え方。このように数えればキリがないほどの固定観念で固められた人々の頭は非常に固く、日々自分の性認識について説明し続ける日々でありました。

しかしながら個人が説明をするのではなく、組織として現状を受け入れ、人権などの教育にLGBTのことに関しても含めるべきだと強く感じました。
そして集団生活の中にも、こうした性的少数者(セクシュアルマイノリティ)への配慮として、多目的トイレの設置や個別のシャワー室の利用ができるようにする等、できることは山ほどあるように思います。

その中でも最も重要であると思うのは、1人1人の理解の広がり、偏見の払拭だと思うのです。
国の傘下にある公務員こそ、積極的にこの問題に取り組むべきであり、国全体として理解ある社会づくりの代表的な組織であってほしいと思うのです。

この国の全ての企業や組織におけるLGBTへの理解と知識を深める機会を増やすことが非常に重要であり、この国が一歩前進できる素晴らしいきっかけとなってくれることを切に願います。

編集部より

今回は自衛隊で働くことを経験したFTM当事者の方のレポートでした。
まだまだLGBT当事者にとって、働きやすさが整っていない環境があるのも事実…。しかし、この方のように理解ある先輩と巡り合い、自分らしい働き方を目指している方の言葉は、LGBT当事者にとっては勇気になるのではないでしょうか。