ダイバーシティの概念と日本企業の実務面の比較

今回はダイバーシティという言葉が本来持つ意味と実際の企業の取り組みはどうなのかについて考えていきたいと思います。

ダイバーシティとは

そもそもダイバーシティとはどのような意味を持つのでしょうか。ダイバーシティには本来、均等な機会を提供する少数派優遇策のような倫理的な目的での取り組みと、経営合理性の追求を目的とした取り組みという面があります。

ダイバーシティという概念は、米国で倫理的な取り組みから経営合理性を追求した取り組みへの転換の際に生まれたものであり、弱者救済の概念が主流であったが、企業経営にとって合理的であるかという考えが追加されダイバーシティという言葉が生まれました。

日本企業における「ダイバーシティ」

ダイバーシティ推進を数々の日本企業が取り組んでいるわけですが、上記の意味のような「ダイバーシティ」を推進している企業はまだまだ少ないです。多様な人材を上手く用いて経営の合理性につなげているのではなく、ただ多様な人材を増やすことのみが目的となっています。

日本におけるダイバーシティと言うと、LGBT当事者に加えて、女性、障害者、外国人等、多様な人材を活用して企業の競争力を高めようとする動きがあります。実際に女性の管理職の登用に目標を設けたり、LGBTフレンドリーを発信している企業は増えつつあります。しかし企業が取り組んでいるダイバーシティ推進の多くはまだまだ女性を対象にしたものが多く、「ポジティブ・アクション」の取り組みが一区切りついたというのが実情です。

最後に

実際にダイバーシティ制度を推進、運用していて表彰もされている企業を見ると、時短勤務や在宅勤務、育児休暇等子育てに関する制度の充実などが見受けられます。ワークライフバランスの追求や女性社員の推進といった目的からすると、素晴らしい制度だといえます。しかしまだ障害者やLGBTの人材を経営に上手く活かしている企業はまだ多くはありません。

障害者に関して言えば、日本では雇用者の2.0%に相当する障害者を雇用することを義務づけており、これを満たさない企業からは納付金を徴収しています。一方で、雇用義務数より多く障害者を雇用する企業に対しては助成金を支払っています。このことから、企業は経営合理化のために、自発的に障害者を雇用していない事が伺われます。

以上のことから考えると、本当の意味でのダイバーシティ推進のためには、まだまだ企業側の姿勢や、ダイバーシティ推進の評価基準の変更等が必要になってくるかと思います。