同性愛は病気なの?前編 LGBT当事者orLGBTアライによるレポート シリーズ

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LGBT当事者もしくはアライによる「セクシュアリティ」に関するレポートを紹介するシリーズ。
今回は、「同性愛が病気か」というテーマのレポートです。

同性愛は異常?

2016年6月に博報堂DYグループのLGBT総合研究所によって実施された調査によるとLGBTを含むセクシュアルマイノリティに該当する人は8%にも上るそうです。

セクシュアルマイノリティの人々に対する認知は広まりつつありますが、そうした動きの中で否定的な発言があることもまた事実です。

たとえば昨年11月には神奈川県海老名市議による同性愛は「異常動物」であるとのツイートや、同年12月の岐阜県議による「同性愛は異常」とのヤジが非難を集めました。

こうした事例に象徴されるように、同性愛者を含むセクシュアルマイノリティの人々に対しては、「生物学的」に「異常」であるとの主張によって反発の声が上がることが少なくありません。

同性愛の病理化/脱病理化

同性愛はかつて「病気」として扱われていた歴史があります。
これはジェンダー研究の領域では同性愛の病理化として言及されているものです。この「同性愛の病理化」の歴史は,1987年に米国精神医学会のDSM-Ⅲ-R(精神障害のための診断と統計の手引き,改訂第3版)から「自我不親和性同性愛(ego-dystonic homosexuality)」が削除され,1992年に世界保健機関(WHO)による国際疾病分類 改訂第10版(ICD-10)からも同性愛に関する項目が削除されたことをもって終わりを迎えました。

では、どのような認識に基づいてこうした同性愛の脱病理化の決定はなされたのでしょうか。

もちろん当事者による運動の影響も大きいですが、たとえば分子生物学者の石浦章一氏は『サルの小指はなぜヒトより長いのか』(新潮文庫)という本の中で、「ホモセクシュアルは病気か」という問いかけに続いて次のように書いています。

これ病気の定義になるんですけれども,病気って何かというと,検証可能な病理像がないといけないんです。ある病気だったら,必ず脳のこの場所にこういう症状が出るっていう検証可能なものがなきゃいけないわけです。

…ところが,この検証可能な病理像は,…ホモセクシュアルの人にはない。…つまり,病気という定義には明らかに当てはまらないということで,このホモセクシュアルが病気かっていう議論は,現在ではノーっていうことになっています。

『サルの小指はなぜヒトより長いのか』(新潮文庫)
石浦章一著
pp.240-241

しかしこれで本当に良いのでしょうか?

確かにたとえば男性同性愛に限定すると、現在は同性愛男性に特異的な脳の解剖学的・神経学的な特徴は明確には特定されていません。
その限りでは同性愛が病気として扱われることもないでしょう。

ただ、今後研究が進んで器質的な要因が明らかになったときは,やはり同性愛は病気だということになってしまうのでしょうか?

-後編につづく-