同性婚合法化は出生率低下を招くのか

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同性婚合法化は出生率低下を招くのか

2016年4月18日、産経新聞のネットコラムにこのような記事が掲載されました。

「LGBT差別禁止法に異議あり! 異性愛を指向する価値観に混乱をきたしてはならない」
http://www.sankei.com/column/news/160418/clm1604180005-n6.html

この記事の中で、著者の八木秀次氏は下記のように述べています。

LGBTの人たちへの配慮も彼らが生きやすい社会をつくることも必要だ。
しかし、だからといって彼らの考えを中心として社会を再構築することは別の話だ。
異性愛を指向する大多数の人たちの価値観に混乱を来してはならないし、婚姻はあくまで男女のものであり、それを前提とした制度・慣行も守らなければならない。

基本を譲れば社会は崩れ、少子化も一気に加速する。これは同性婚を認めた米国から得られる教訓でもある。

同性婚と出生率の関係性は薄い?

実際に、アメリカの出生率は、同性婚によって急速に低下しているのでしょうか。
人々が異性ではなく同性を結婚相手として選ぶことで子どもを作ることができず、そのために全体的な子どもの数に影響が出ているのでしょうか。

実は、そのような明確なデータは存在しません。

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出典 http://ecodb.net/country/US/fertility.html

このデータよれば、アメリカで同性婚が全州で合法とされる2015年前からじわじわとアメリカの出生率は低下しています。

アメリカで最初に同性婚が州法で認められたのは2004年ですが、それ以降同性婚を認める州は増えているはずなのに、出生率が上がっている年もあります。

同性婚と出生率が必ずしも関係しているとは言えない状況でしょう。

また、アメリカにおける出生率の低下については、このような見解があります。

中流階級としての家族の生活を守るために働く必要があり、かつてないほど仕事をしている。また彼女たちが暮らす社会では、自分たちの子どもの将来を安泰にするためには、多大な時間と金を投じることが求められる。
(中略)
彼らは時間的にも金銭的にも高くつくため、中高所得社会では少なからぬ寂しさとともに、欲しいだけの子どもを持つ余裕がないとあきらめる女性が増えている。

コラム:米国での出生率低下、その脅威とジレンマ
http://jp.reuters.com/article/tk0571741-column-birthrates-idJPTYE8BA04320121211?sp=true

このコラムでは、出生率の低下について、中流階級女性が自分たちの生活を今の生活圏内で安定させるため、子どもの未来を安定させるために働かなくてはいけなくなったことが原因だとしています。
同性婚が原因ではなく、社会の在り方が変わったことが原因だというのです。

出生率の低下は、先進国を中心に世界中で起こっていることです。それは深刻な問題であることに間違いはありません。
しかし、その原因は同性婚ではないでしょう。同性婚が合法な国でも、そうではない国でも、少子高齢化に悩んでいることには変わりがないからです。

しかし、この記事のような考え方が存在することも確かです。そういった人々に、同性婚が少子化を推し進めるものではないことをどのように説明していけばいいのでしょうか。

その方法を考えることが、日本における同性婚の合法化、LGBT差別禁止法を成立させるための第一歩となるかもしれません。