渋谷区と世田谷区の「パートナーシップ制度」何が違うの?

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同性カップルの婚姻関係に相当する「パートナーシップ制度」が、2015年に渋谷区と世田谷区で導入されました。
パートナーシップ制度には法的な効力はありません。しかしながら婚姻関係と同等のものとして自治体が証明することで、これまで同性カップルにとっては難しかった同棲や入院時の面会などが認められやすくなります。
では渋谷区と世田谷区の制度にはどのような違いがあるのでしょうか。

条例と要綱の違い

渋谷区のパートナーシップ制度は「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」という“条例”です。条例とは法令の一種で、議会の決議を経て決定されるものであり、守らなければいけないルールです。

世田谷区のパートナーシップ制度は、「世田谷区パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱」という“要綱”です。要綱とは、事務をする上で必要となるマニュアルのこと。不公平なく、スムーズに事務処理を行うために定められたものです。法令ではないので、法的な拘束力はありません。

発行される書類の違い

渋谷区ではパートナーシップ証明書が発行されます。
これは、同性パートナーシップであることを渋谷区が認めるという証明書です。

世田谷区では受領証が発行されます。
これは、世田谷区に対して自分たちがパートナーシップであることを宣誓し、それを世田谷区が受領するという書類です。

申請費用と期間の違い

渋谷区でパートナーシップ証明書を申請するには、2種類の公正証書が必要です。二人分の書類作成に約8万円の費用がかかります。また、申請から発行までには1週間程を要します。

世田谷区の宣誓には公正証書が必要ないため書類作成費用はかかりません。
宣誓には予約が必要なので事前に世田谷区に問い合わせた上で区役所に行く必要はありますが、受領証は即日発行されます。

パートナーシップ制度に違反した場合の違い

渋谷区の条例には、違反した事業者には是正勧告を行い、勧告に従わない場合には事業者名を公表するといった内容が盛り込まれています。

(相談及び苦情への対応)
第15条 区民及び事業者は、区長に対して、この条例及び区が実施する男女平等と多様性を尊重する社会を推進する施策に関して相談を行い、又は苦情の申立てを行うことができる。
4 区長は、関係者が前項の勧告に従わないときは、関係者名その他の事項を公表することができる。
「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」

一方世田谷区の要綱には渋谷区のような内容は明記されていません。

効力がより強いのは渋谷区、手間・費用がかからないのは世田谷区

渋谷区のパートナーシップ証明書は、条例に基づいたものであることから、世田谷区の受領証と比較すると効力がより強いと言えます。
しかし手間や費用を比較すると、世田谷区の方が手軽に手続きをすることができます。

「知ることから始めましょう」岐阜県関市のLGBTフレンドリー宣言

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2016年8月10日、岐阜県関市がLGBTフレンドリー宣言を行いました。
10日に開かれた記者会見では、尾関健治市長が総合福祉会館前の広間で「LGBTフレンドリー宣言」(岐阜県関市HPでの発表 http://www.city.seki.lg.jp/0000010054.html)を行い、空にはLGBTを表すレインボーカラーを模して色とりどりのバルーンが飛ばされました。

LGBTフレンドリーとは?

さて、そもそも「LGBTフレンドリー」とはどのようなものなのでしょうか。
一般的な意味としては、「LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどのセクシュアルマイノリティの人々)に対して温かく、開かれた状態」であることを示します。
具体的な内容としては、差別禁止の明文化、LGBTの理解を促す啓発、同性カップルを異性と同等に対応する制度の導入、LGBT関連イベントの積極的な開催や協賛などが挙げられます。
そして、この状態になるように努力します、という趣旨の宣言を「LGBTフレンドリー宣言」といいます。

岐阜県関市のフレンドリー宣言の内容とは

LGBTへの理解を広め、差別をなくしていく活動
・関市職員、保育士、教職員を対象とした研修の実施
・関市の市民を対象としたセミナーを開催
・広報せきやHP等を活用した情報発信
・LGBTに関の理解を深める子ども向け及び教職員等大人向けのパンフレットやポスターの作成、配布
・中学校等の児童生徒及び保護者が相談できる環境の整備
・LGBTの理解を深める授業づくり
・企業に採用や職場環境整備についてのLGBTを差別しないよう啓発
・パートナーシップ証明を発行した際に、その証明をもって家族と認めサービスが受けられるよう企業や病院等に協力を依頼(病院での連帯保証人、市営住宅や賃貸住宅への入居等)
・LGBTに関するe-ラーニング教材の開発と提供

LGBT当事者が暮らしやすい市にしていくための活動
・パートナーシップ証明書発行
・電話による相談の実施
・公共施設に多目的トイレを設置するなど、だれもが使用しやすい表示に改善
・LGBT当事者である関市職員が働きやすい職場環境の整備
・同性パートナーを配偶者と認め、家族手当の支給・結婚休暇の取得・結婚祝い金の支給が行えるよう制度の見直し

その他、コミュニティスペース(交流会)の開催など、上記のような内容を進めていきたいと宣言しました。

尾関健治市長自身も体験、「知ることが大事」

フレンドリー宣言を行った関市の尾関健治市長がLGBTフレンドリー宣言をするきっかけとなったのは2015年3月に参加したLGBTセミナーだったようです。尾関健治市長は自身のブログにて下記のように述べています。

LGBTの方が抱えている問題やLGBTフレンドリーの自治体や企業の動きを伺って、初めて知ったことも多かったですし、今まで何気ない会話の中で、自分自身も誰かを傷つけていたこともあったんだ、と思いました。

私自身にも先入観というか思い込みのようなものがあったのですが、今日のセミナーでかなり取れた気がします。

企業では優秀な人材確保や売上げアップに結びつけるため、LGBTフレンドリーの取り組みを進めている企業が出ているのですが、関市としても考えていきたい、と思います。

日刊「オゼ☆ケン通信」より http://oze-ken.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/9-1ba6.html

また、LGBTフレンドリー宣言を行った当日のブログでは、下記のように書き込みを行っています。

今回の「LGBTフレンドリー宣言」は、まずは市役所内から研修会をはじめ、市内の企業・団体、市民の皆さんに理解が深まるよう、今日から活動をスタートさせる、というものです。

「レズ」や「ゲイ」という言葉を聞くだけで、心に壁を作られる方も少なくない、と思います。私も3月に市川さんの講演を聴くまで、率直に言って同様でしたのでお気持ちは分かります。

まずは、知ることから始めましょう。

日刊「オゼ☆ケン通信」より http://oze-ken.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/lgbt-617d.html

尾関健治市長は記者会見で「フレンドリー宣言はキックオフのようなものであり、これから取り組みを進めていきます」とも語っています。
注目度の高いパートナーシップ証明に関しては来年度にも導入したい考えとのこと。今後の取り組みが注目されています。

 

尾崎健治市長自身が「知る」ことで意識が変わり、理解へとつながる体験をしたことがフレンドリー宣言のきっかけにもなったのですね。
こあせんせーもこれまでLGBTに偏見はなかったものの、勉強することで初めて知ったことはたくさんありました。
あらゆる差別の根本には、「知識がないこと」があるように思います。
“まずは知ること”…とても大切なキーワードだと思います。

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この記事を書いた人

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こあせんせー
早稲田大学法学部卒のストレートアライ。
時事ネタ、法律関係が得意。趣味は将棋とモノポリー。