今週の記事まとめ

今週公開した記事をまとめてご紹介します!

アセクシュアルの生き方

アセクシュアルとは?
アセクシュアルを自認する人の体験談を紹介。

アセクシュアルの生き方

LGBTインタビューvol.10 大島運輸株式会社

LGBTフレンドリー企業にインタビューする企画の10回目。
今回はLGBT当事者もドライバーとして活躍中の大島運輸株式会社にお話を聞きました。

interview

FTMの声から生まれた生理用品不要の生理用ショーツ

FTMの声から生まれたナプキンやタンポンなどが不要な生理用ショーツの紹介です。

FTMの声から生まれた生理用品不要の生理用ショーツ

自治体の同性パートナーシップ制度によるLGBTの理解促進

LGBT当事者orアライによるレポート。
今回は同性パートナーシップ制度に関してです。

【LGBT理解促進】自治体の同性パートナーシップ制度

自治体の同性パートナーシップ制度によるLGBTの理解促進

LGBT当事者orアライによるレポート。今回は自治体の同性パートナーシップ制度によるLGBTの理解促進です。

日本で初めて同性カップルの権利を定めた条例、通称「パートナーシップ条例」が渋谷区で導入されてからおよそ1年半、今回はこのパートナーシップ条例について私の思う点を書いてみようと思います。

パートナーシップ制度とは?

現在日本では同性婚が認められていません。婚姻は「両性の合意に基づく」ものとされているため、男女間に限られているというのが一般的な解釈です。
国が同性婚やパートナーシップ法を定めていないことから、渋谷区をはじめとして地方自治体が独自にパートナーシップ制度を導入し始めました。
渋谷区に続き、世田谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市、北海道札幌市が、が要綱としてパートナーシップ制度を導入しました。
法的な拘束力はないものの、公的に同性カップルが認められることになります。
これにより保険や住居での手続きにおいて、関係を証明することが可能になるということです。

導入後の現状

最初に条例としてパートナーシップ制度を導入した渋谷区は、証明書の発行に約8万円がかかるとのことで、見込んでいたほどの利用者がいなかったという現状があるようです。
また、あくまで自治体で行っている制度のため、夫婦間が受けられる法的な制度を完全に利用することはできないのが現状です。
しかし、同性パートナーシップが公的に認められたことを受け、生命保険会社や携帯会社等が、異性カップルの男女と同じようなサービスを同性カップルにも提供し始めた現状があります。
実際に利用された数よりも、公的機関がこのような制度を定めたことにより企業が動き始めたことが、パートナーシップ制度の導入による一番大きな功績なのではないかと私は思います。

これから

では、このままパートナーシップ制度を認める自治体が増えていけばそれですべてが解決になるのか、と言えば私はそうは思いません。
同性カップルと異性カップルの受けることのできる制度の違いはまだ存在しています。
ならば、同性結婚を国として認めればいいのか、と言われれば、個人的にはそれにも疑問があります。

異性カップルを対象とした婚姻制度とは別に、同性カップル向けの制度を作るのではなく、婚姻自体を性別の限定しないものに変えてほしいと思います。
同性愛者、両性愛者の中には特別な扱いはのぞまず、他の異性愛者と同じように恋愛し、結婚し、家族と暮らしていくことをのぞむ方がいます。というよりもその考えが大多数なのではないかと思います。

同性間を対象とした特別な制度を設ける、というのがどんどん続いていけば、LGBTに否定的な人からの差別の目はなくなることはないかと思います。
本来性的指向がどうであろうと、権利は同等に持つべきです。
LGBTという言葉の認知度があがった今、婚姻に関してもいい方向に進んでいってほしいと思います。

FTMの声から生まれた生理用品不要の生理用ショーツ

アメリカの「THINX」という下着ブランドが、FTM向けのナプキンやタンポンが不要の生理用ショーツを販売しています。

商品開発のきっかけとなったのは、女性用にナプキンやタンポンが不要な生理用ショーツとして販売したところ、FTM当事者から自分たちも生理で困っているという意見があったことだそうです。

ホルモン治療を行うことで生理は止まりますが、ホルモン治療を望まない人も多くいます。
FTMにとって生理時には次のような困った点があります。

・男子トイレにナプキンの捨て場所がない
・生理用品を買いづらい
・カバンに生理用品が入っているのを見られたらどうしよう、と落ち着かない
・そもそも生理があること自体、自分が男性であることを否定されているようで精神的につらい

今回男性向け生理用パンツのモデルとなったソーヤー・ドゥビュス氏は次のように語ります。

「このようなことはあまり話題にするものでもないから、月経が男性にあることもきづかない人が大勢いる。月経はまさに女性らしいものだとみなされてしまう男らしさを剥ぎ取ってしまうものです。」
トランスジェンダー同士の集まりですら、生理のある男性のことを誰も話そうとしないといいます。というのもやはりFtMの男性にとって生理は恥ずかしいことだと思われているからです。

このような声に、「THINX」代表のミキ・アグラワル氏は下記のように答えています。

「もし私どものゴールが、こうしたタブーを打破し、生理は恥ずかしいことだという思い込みをグローバル規模でなくすことにあるならば、これは全員のためにやらなければならないことです」と述べ、今回紹介した下着を販売し始めたそうです。

トランスジェンダーの方の、細かいけれど、当事者たちにとっては重要なニーズを企業が汲み取っていけるような社会に今後なっていけばよいなと考えます。

LGBTインタビューvol.10 大島運輸株式会社

トランスジェンダーの当事者が社内で活躍中という大島運輸さん。性別適合手術に伴う休職にも柔軟に対応し、誰もが働きやすい職場環境にしようと取り組まれています。
インタビューでは大島運輸株式会社の代表取締役、大島 弥一さんにLGBTダイバーシティに関する考え方などのお話を伺いました。

御社ではLGBT当事者の方も活躍されているとのことですが、どのような経緯で採用されたのでしょうか?

2年程前にFTMの当事者から応募がありました。彼は警察官になろうと考えていたそうですが、スカートを履かなければいけない機会があるのが嫌で、運送業界の会社で働いていました。その後、ドライバーをしたいと思うようになり当社に応募してくれたそうです。

面接を担当した管理者から「身体は女性だけど心は男性で、男性として働きたいと言っている。意欲もあるし根性もありそうだから採用したい」と相談されました。

私はLGBTに偏見がないので、人的に問題なく、他の社員が受け入れ可能ならば是非、ということで採用することになりました。

偏見はないとのことですが、LGBTについての知識は以前からお持ちだったのでしょうか?

LGBTに関して詳しい知識はそれ程ありませんでした。
ただ、私は実家が新宿一丁目にあるので新宿二丁目とも近いため、小さい頃からLGBT当事者と触れ合う機会がありました。いろんな人が存在することが当たり前の環境だったので、偏見はありませんでした。

御社でFTMの当事者を採用するにあたって配慮したことはありますか?

通称名で働けるようにしたことと、トイレの使用については事前に確認しました。ただ、そもそも事業所のトイレは男女兼用なので問題ないとのことでした。
また、みんな自宅から作業着で出勤してくるので更衣室も必要ありませんし、その部分も問題ありませんでした。

配属先についても確認しました。建材の配送とコンビニのルート配送があるのですが、どちらかといえばコンビニの荷物の方が軽いんですね。ですからそっちにしようかと聞いたのですが、体を鍛えられるから建材の方がいいと言うのでそちらに配属しました。
最初は大変そうでしたがジムに通って鍛えたりしながら徐々に仕事に慣れていきました。今は本当に頼りになる存在です。

社内の方にもFTMであることはオープンにされているのでしょうか?

本人がオープンにしてもよいとのことでしたので、入社の際に「セクシュアリティなどに関係なく共に仕事をする仲間として迎え入れてほしい」と各部署に話をしました。
「LGBTってなんですか?」といった反応もありましたが、問題なく受け入れています。

実際に働いているところを見ても、FTMだから特別な配慮をしているというよりも、仕事仲間の一人として助け合っていますね。体格的に運びづらい荷物を誰かがフォローすることもあるようです。

性別適合手術でお休みを取られていたとお伺いしたのですが、どのくらいお休みされていたのでしょうか?

昨年末から2カ月程休職していました。とても頼りにしているので、復帰してくれるか不安でしたが、きちんと戻ってきてくれました。

休職前に「よく働いてくれているから復帰したら新しいトラックにしてあげるよ」と約束していたので、復帰に間に合うよう新しいトラックを購入しました。
復帰する前日にトラックを取りに事業所に来たときに会ったのですが、手術前よりも表情が明るくなっていて、新しいトラックにも喜んでくれていましたね。

性別適合手術には長期間休む必要もあるので、なかなか会社の理解を得られないという当事者もいるのですが、御社では問題なかったのでしょうか?

私は業務に支障がなければ問題ないと考えています。半年程前に相談してくれたので準備期間がありましたし、彼が休職しても問題ないように新たに人材を募集する中で、ちょうど入社してくれた社員がいたこともよかったです。
その新人が一人で業務を行える目途がついたので、休職に入ってもらいました。

御社では人物重視で採用をされていますが、どういった人を採用したいと考えていらっしゃいますか?

がんばれる人ですね。運送の仕事は体を使うので慣れるまでは肉体的に辛いです。1カ月程経てば慣れてくるのですが、その1カ月を乗り越えられるかどうかは大きいです。
人物的によければ、免許がなくても免許取得支援制度があるので問題ありません。
働く上で何かあれば相談に乗りますし、できる範囲で対応したいと思っています。

▼『ドランクドラゴンのバカ売れ研究所!』で紹介された大島運輸のドライバーのお仕事

今後取り組んでいきたいと考えていることはありますか?

事業所を建て替える際にはトイレや更衣室など、LGBT当事者が使いやすいように工夫したいと考えています。

また、運送業界は人が不足しています。LGBTの受け入れというと何か特別なことをしなければいけないという印象を持っている会社もあるかもしれません。しかし、実際には通称名の使用や性自認の服装を受け入れるなど、難しいことはそれ程ありません。少しの配慮で優秀な人材が採用できるなら是非採用したいという会社も多いはずです。
運送業界の意見交換会や自社の取組みをプレゼンする機会もあるので、そういった場でLGBTダイバーシティについてどんどん発信していきたいと思っています。

ありがとうございました!

編集部より
「LGBTの詳しい知識があったわけじゃないけれど、いろんな人がいることが当たり前だし偏見はない」という大島社長のお話が印象的で、セクシュアリティに関係なく一人の人として非常にフラットに向き合っていらっしゃるのだなと感じました。
また、インタビュー時には自分たちの仕事の中で社会貢献につながることがしたいと、「トラックにAEDを積もうと思っている」というお話もされていました。
大島社長は自社の発展だけでなく、社会全体をよりよくするために積極的に取り組まれているとても素敵な方でした。

アセクシュアルの生き方

思春期になると自然と恋愛感情を持つ人は多いですが、恋愛感情を持たない人も存在します。
このように恋愛感情がないセクシュアリティをアセクシャル(無性愛者)といいます。

今回は、アセクシュアルを自認する友人の話をご紹介したいと思います。
彼女は今まで誰に対しても恋愛感情を抱いたことがないと言います。
彼女の通う高校は校則が厳しく、恋愛が禁止されていました。
周りにも恋愛している人はおらず、恋愛をしないことが当たり前という環境ですごしていたため、自分が恋愛感情を持たないことに気が付きませんでした。

大学生になって周りが恋愛をし始め、違和感を感じるようになりました。
いわゆる「ガールズトーク」に共感ができなかったり、周りと話が合わないと感じることもありました。
「なぜ誰かを恋愛対象として好きにならないのか」と不思議に思うようになり、調べるうちにアセクシュアルというセクシュアリティがあることを知りました。

こうして自分が性的少数者であることを自認したものの、恋愛し、結婚し、子供を産むことが「普通」とされる社会で、自分はどのように生きればいいのかと悩むこともあったそうです。

そんなときに勇気を出してLGBTサークルに参加するようになり、様々なセクシュアリティの人がいること、それぞれの生き方があることを知りました。
現在はアセクシュアルである自分を受け入れ、無理をせずに自分らしく生きていくことを大切にしているそうです。

LGBTと政治後編

LGBT当事者orアライによるレポート。今回はLGBTと政治前編です。

フランス大統領選の結果が現在毎日のように報道されています。極右である国民戦線(FN)のマリーヌ・ル・ペン党首が最終候補に残った際、ある記事を見つけました。
『フランスのゲイはなぜ極右政党に投票するのか(NEWS JAPAN)』という記事です。
前編に続き、これを読んだうえで、LGBTと政治について書きたいと思います。

LGBTと政治前編

同性婚が当たり前になっていないうえでの悲しさ

同性婚が実現される前の間は、同性婚の賛否が誰に投票するかの1つの判断基準になる人がいます。
もし同性婚が実現されたなら、「また同性婚を禁止する」と言う人には投票したくない、となるだろうと思います。

しかし考えてほしいのが、「異性同士の婚姻を禁止する法律を作る!」という公約があり得るでしょうか。想像つきませんよね。
 婚姻制度は当たり前になりすぎて、禁止するかの議論にもならないわけです。つまり同性同士の結婚も異性間の結婚と同じくらいに当たり前になれば、もっと別の要因で投票することができるということです。

最後に

選挙権が18歳以上に引き下げられました。若者の投票率が低いとずっと言われています。
正直、学生であるうちは政治自体に興味を持ちにくいと思います。それはあまり身近でない、という意味です。

私が20歳ではじめて選挙に行く際注目したのが、各政党のLGBTへの態度でした。政治に対する関心もほぼなく、それ以外の面での違いもよくわからなかったため、一番身近でわかりやすい部分に注目しました。

最初のうちは、私のような例で選挙に参加するのでもいいのではないかと思います。投票しないということは、意見をもっていても意見がないのと同様です。

もちろんLGBTに関すること以外の部分にも注目してほしいですが、多くの人の意見が政治に反映され、社会全体がよくなっていってほしいと思います。

LGBTと政治前編

LGBT当事者orアライによるレポート。今回はLGBTと政治前編です。

フランス大統領選の結果が現在毎日のように報道されています。極右である国民戦線(FN)のマリーヌ・ル・ペン党首が最終候補に残った際、ある記事を見つけました。
『フランスのゲイはなぜ極右政党に投票するのか(NEWS JAPAN)』という記事です。
今回はこれを読んだうえで、LGBTと政治について書きたいと思います。

政党の公約について

選挙の候補者は、選挙前に投票を集めるために公約を掲げます。現在社会にあるこの問題を解決するために、どのようなことを行うか、ということを示すことによって、支持を獲得します。

日本ではあまり多くはありませんが、その中の公約の1つとして、「同性婚実現」を掲げる候補者がいます。実際に同性婚が現在認められている国はいくつかありますが、もちろん昔から同性婚ができたわけではなく、政治家の地道な活動が実を結び実現したものです。

同性愛を支持=投票する?

今回のフランス大統領選では、国民戦線(FN)の党首が同性婚を禁止すると公言しているにも関わらず、同性愛者からの票が集まっているということでした。

「同性婚合法化を実現します!」と公約を掲げる候補者が出馬した際に、同性愛者全員がその候補者に投票するでしょうか。

もちろんそんなことはありません。同性婚を実現する、という部分には賛同できても、他の部分での公約に賛同できなければ、その候補者に投票することはないでしょう。
たとえば、私は同性婚を望んでいますが、同性婚実現を掲げる候補者が「徴兵制を復活させて北朝鮮との戦争を始めます」と言っていたら、投票は別の人へすると思います。

同性愛者や両性愛者で、同性婚を望んでいるからと言って、それが人生において一番大切なこととは限らないからです。

同性婚が当たり前になっていないうえでの悲しさ

同性婚が実現される前の間は、同性婚の賛否が誰に投票するかの1つの判断基準になる人がいます。
もし同性婚が実現されたなら、「また同性婚を禁止する」と言う人には投票したくない、となるだろうと思います。

しかし考えてほしいのが、「異性同士の婚姻を禁止する法律を作る!」という公約があり得るでしょうか。想像つきませんよね。
 婚姻制度は当たり前になりすぎて、禁止するかの議論にもならないわけです。つまり同性同士の結婚も異性間の結婚と同じくらいに当たり前になれば、もっと別の要因で投票することができるということです。

最後に

選挙権が18歳以上に引き下げられました。若者の投票率が低いとずっと言われています。
正直、学生であるうちは政治自体に興味を持ちにくいと思います。それはあまり身近でない、という意味です。

私が20歳ではじめて選挙に行く際注目したのが、各政党のLGBTへの態度でした。政治に対する関心もほぼなく、それ以外の面での違いもよくわからなかったため、一番身近でわかりやすい部分に注目しました。

最初のうちは、私のような例で選挙に参加するのでもいいのではないかと思います。投票しないということは、意見をもっていても意見がないのと同様です。

もちろんLGBTに関すること以外の部分にも注目してほしいですが、多くの人の意見が政治に反映され、社会全体がよくなっていってほしいと思います。

SOGIとLGBTの違いとは?

LGBT当事者orアライによるレポート。今回は「SOGI」についてです。

SOGIという言葉です。今回はこのSOGIについて私が感じることを書きたいと思います。

LGBTという言葉の認知度は、ここ数年で非常に高まりました。しかしLGBTという言葉には問題があるという意見もあります。
LGBTはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を取った言葉で、性的少数者の総称として使われています。
性的少数者といっても、LGBT以外に様々なセクシュアリティがあります。しかし、LGBTの言葉の成り立ちから、性的少数者=LGBTだけという誤認が広がったしまうのでは、という意見もあります。
そこで使用され始めたのが「SOGI」という言葉です。

SOGIとは?

SOGIという言葉はもともと国連での国際人権法についての議論で使用されたのが始まりなようです。
Sexual Orientation and Gender Identityの頭文字をとっていて、直訳すると、「性指向と性自認」になります。
日本語では「ソジ」と読まれることが多いです。

LGBTは性的少数者を指す言葉ですが、SOGIは性的指向と性自認についてを指す言葉なので、性的少数者だけを指しているわけではありません。

SOGIという言葉を用いるメリット

LGBTという言葉に対する批判があるように、SOGIにもよい点悪い点はあるかと思います。
私がこの言葉に対して一番いいと思っているのは、セクシュアルマイノリティとストレートの人、どちらに限定してもいない点です。

LGBTという言葉のおかげでセクシュアルマイノリティが認知されることは以前よりもぐっと増えました。
しかしそれにより、「当事者」と「そうでない人」の壁ができてしまったのではないかと私は思います。
そしてこの壁が、「LGBTの人は障害」などといった誤解を生んでいる可能性もあります。
ストレートの人で「私は普通の人、そのような問題は関係ない」という人でも、性自認と性指向ははっきりとあるはずです。
ある意味全員が当事者意識を持つことができるため、SOGIという言葉は優れているのではないでしょうか。

今後起こりうる問題

SOGIというアルファベット4文字の似たような言葉が生まれたことによって、LGBTについてあまり知らない人は混乱するでしょう。
LGBTについて最近知ったのにLGBTという言葉はもう使用されない、などなってしまってはなおさらです。
また「性指向と性自認」という意味であり、特定の人を指した言葉ではないですが、「SOGIの人」といった誤用がされるのではないかという心配もあります。

最後に

私自身LGBT当事者ですが、LGBTとそうでない人で分けることはあまり好きではありません。LGBTの中にも個性は様々ありますし、それはストレートの人に関しても同じです。
そのためSOGIという言葉が普及して、そこの壁がなくなっていくのであれば積極的に用いていきたいと思います。

LGBTインタビューvol.9 株式会社ゲオホールディングス

ダイバーシティ推進として女性活躍推進活動を行ってきたゲオホールディングスさん。あるきっかけから「LGBTダイバーシティにも取り組むべき」と感じ、活動を始めるようになりました。
インタビューでは組織開発部、人材開発課マネージャーの川辺 雅之さん、組織開発部、組織開発課の堀亜由美さんにLGBTダイバーシティのきっかけや、取り組み内容などのお話を伺いました。

LGBTに関する取り組みは堀さんからの発信で始まったと伺ったのですが、きっかけは何だったのでしょうか?

堀さん-
元々ダイバーシティ推進活動として女性活躍推進の活動をしておりましたが、LGBTに関しての取り組みは行っておりませんでした。きっかけは、中途採用でLGBT当事者かな?と思われる方から応募があったことです。

履歴書の性別欄は女性なのですが、写真はボーイッシュな雰囲気でした。その時はまだLGBTについて詳しい知識はありませんでしたが、存在は知っていたので、もしかしたら当事者なのかもしれないと思ったんです。
ただ、どう対応すればいいのかわからず、周りに相談しても対応の仕方は誰もわからないという状況でした。今後も応募があるかもしれないし、知識がないことが怖いと感じ、まずは自分自身でLGBTについて勉強を始めました。

そもそも女性活躍推進を始めたのも、自分自身が「女性」ということで、社内では少数派に属しており、周りの男性社員とは違う視点を持っていると感じていました。様々な視点を持つ人が意見を出しやすい環境にすることで、サービスのさらなる充実や新サービスの開発などにつながるのではないかと考えたからです。

少数派ということで、仕事をする中で嫌な思いをすることもありました。そういう経験をすることなく、様々な視点を持っている人たちが本来持っている力を発揮できる職場にしたいと思っています。それは女性に限らず、LGBTも同じで、取り組むことでさらに会社がよくなると思いました。

▼川辺さん、堀さん
オフィスではLGBTアライを表明するシールやグッズを身につけて業務しているそう

LGBTについての取り組みはどのように進めていったのでしょうか?

堀さん-
まずは、LGBTについて本やインターネットで調べながら勉強することから始めました。その後は東京や大阪で開催している外部セミナーにも積極的に参加しました。
勉強してみてLGBTは人口の8%※だといわれていることを知って驚きました。弊社は社員数約4,000人なので計算上では約300人いることになります。アルバイトスタッフを含めるともっといるでしょうし、今後の採用活動でも必ず出会うはずです。
LGBTの知識がないことで知らないうちに誰かを傷つけてしまっているかもしれないと思いました。まずはみんなにLGBTを知ってほしい、自分たちに何かできることがあるのではないかと思い、川辺に相談しました。

※株式会社LGBT 総合研究所 「LGBT に関する生活意識調査」 2016 年5 月実施によるデータ

川辺さんは堀さんからLGBTの話を聞いてどのように思いましたか?

川辺さん-
私もLGBTの知識はあまりなかったので、堀がまとめた資料を読んで、LGBTは人口の8%と知り、「こんなにいるんだな」と思いました。
ダイバーシティ推進の対象は女性だけではありませんし、LGBTについても何か取り組むべきだと思いました。

その後はどのように進めていかれたのでしょうか?

堀さん-
まずはLGBTを知ってほしいと思っていたので、社内研修をしたいと考えました。いつ活動がスタートしてもいいように研修用の資料やスライドの準備を始めました。
そんな中、川辺が人材開発課のミーティングでLGBTの話をしたところ、話を聞いてみたいという社員が現れました。
そこで準備していた研修資料などを使って人材開発課で簡単な講習をしました。人材開発課は社内研修を担当している部署なので、「ここはもう少し情報が欲しい」「こういう表現だとわかりやすい」といった具体的な意見やアドバイスももらうことができました。
その後、採用を行う組織開発課でも研修を行い、カミングアウトを受けたときはこういう対応をしましょうといった対応の基礎マニュアルも配布しました。

研修を実施したときのみなさんの反応はどうでしたか?

堀さん-
やはり「LGBT当事者ってそんなにいるんだ」という反応でした。ただ、LGBT当事者に会ったことがあるという人が多く、社内にもいるはずだという前提で話ができたので、とてもスムーズに進めることができました。「今まで気が付かなかったけれど失礼なことを言ってしまったかも…」という反応もありました。

会社としてLGBTについて取り組むことについて、どのように社内の理解を得ていったのでしょうか?

川辺さん-
3年前から第三者機関を使って秘匿性の高いES調査のアンケートを実施しています。これは組織の状態や会社の方針・戦略が浸透しているかを調査することを目的に始めたものです。
今年はLGBTについての直接的な質問項目はないのですが、男性と女性に性別を限定しないように配慮して、性別欄の選択肢に「答えたくない」を追加しました。
その結果、性別欄では性的指向についてはわかりませんが、「答えたくない」を選んだ人数が思ったより多く、全員がLGBT当事者かはわかりませんが、社内にもLGBT当事者がいることを数値で実感することができました。
この結果を踏まえて経営陣に話をし、ダイバーシティ推進としてLGBTについても取り組むことに了承を得ました。やはり実際の数字には説得力があったようです。

現場で研修を実施したと伺いました。これはどういった経緯だったのでしょうか?

川辺さん-
職場内でカミングアウトして働いている社員がいるのですが、その方が勤務先より遠い地域へ転勤が決まったことをキッカケに、転勤先の責任者から組織開発部へ相談があったことが始まりです。受け入れる際、職場にLGBTへの理解を事前に深めておきたいとの責任者の意向から、マネージャーなどの管理職者を含めて約20人を対象に研修を実施しました。
職場内においてLGBTに関する事例や知識が少ないと伺っておりましたので、LGBTへの基礎知識からコミュニケーションの取り方までを行いました。

研修を受けたみなさんの反応はどうでしたか?

堀さん-
LGBTについて知っていた人は3分の2人くらいでした。ただ、「セクシュアリティはいつ自認するかわからないため自分は当事者ではないと言い切れない」という話をしたことや、実際に仕事で当事者と関わったことがあるという人も多かったこともあり、みなさん積極的に話を聞いてくださいました。

LGBT-アライシンポジウム※に参加して頂きましたが、感想をお聞かせいただけますか?

川辺さん-
他企業の取り組みを具体的に聞けたことがよかったです。また、聞けば聞くほど、LGBTに取り組むことにデメリットは無いと感じました。
同性パートナーシップ制度にしても、決して優遇しているわけではなく、法律で同性婚が認められていない部分を会社が補い不公平感をなくすためのものです。こうした制度を作ること自体がLGBTフレンドリーであることを社内外に知ってもらうためのメッセージになると思いました。

また、LGBT当事者として登壇されていた方がまだ学生なのにとても話が上手なことにも感心しました。セクシュアリティは関係なく、ハイパフォーマーはハイパフォーマーなのだなと思いました。
一方でハイパフォーマーであるにも関わらず、セクシュアリティを理由に就活で不安を感じたり困ることがあるのだいうことも改めて知り、こうした人を採用するにはどうすればいいか?という視点も持つようになりました。

※LGBT-アライシンポジウムとは
LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)などの性的マイノリティを理解し支援するという考え方、あるいはそうした立場を明確にしている人である「アライ」を増やすことを目的に、LGBTダイバーシティ推進企業が集まり意見交換をするシンポジウムです。

詳しくはこちら
https://niji-recruiting.com/seminar/symposium2-2/symposium3/

最後に今後LGBTダイバーシティについて取り組んでいきたいことを教えて頂けますか?

川辺さん-
弊社内でのLGBTダイバーシティ推進の周知活動は始まったばかりです。6月にはLGBTも含めたダイバーシティに関するパンフレットを社内で配布し、さらに周知を進めていきたいと思います。
また、ダイバーシティ推進のメンバーを5月から募集開始し、約40人の応募がありました。今回はLGBT等に絞らず、「働き方改善チーム」として、幅広く募集をしたので、子育て中の女性、介護経験者など、様々な境遇の人が集まっています。それぞれの視点からの意見やアイデアを出しながら、女性やLGBTだけでなく、誰にとっても働きやすい職場にしていきたいと考えています。

ありがとうございました!

編集部より
「自分自身が社内で少数者だったから」とご自身の体験を元に取り組むべきだと感じ準備を進めたという堀さん、「LGBTダイバーシティを取り組むことにデメリットはない」という川辺さんの言葉が印象的でした。
LGBTだけでなく「誰もが働きやすい職場」という視点で活動を行うことで、少しずつ社内でLGBTの理解が広がってきているそうです。
社内研修の実施だけでなく、ピンクドット沖縄開催に併せ沖縄県内のゲオショップ店内でLGBT映画特集コーナーを設営、TOKYO RAINBOW PRIDE 2017のNijiリクルーティングのブースにパネル出展など、活動の幅も広がっています。

▼TOKYO RAINBOW PRIDE 2017 Nijiリクルーティングブースでのパネル出展

▼沖縄県内のゲオショップ内で開催されたLGBT映画特集コーナー

日本の企業がLGBTフレンドリーを推進している理由

日本の民間企業でLGBTダイバーシティに取り組むところが増えてきています。
企業がLGBTに取り組む理由としては様々ありますが、大きく分けると2つです。

1つはマーケティング的な視点です。
LGBT当事者向けサービスを充実させることで、これまでリーチできていなかった層にもリーチすることができます。
具体的には、生命保険の受取人を同性パートナーに指定できるようにしたり、同性カップル用のウェディングビジネス、トランスジェンダーなどに向けた幅広いサイズ展開の服や靴などです。

もう1つは人材戦略的な視点です。
LGBTフレンドリー企業になることで、既存社員の従業員満足度が向上したり、優秀なLGBT人材の採用につながります。
具体的な取り組みとしては、LGBTに関する社内研修の実施、企業ポリシーにLGBTへの差別禁止を明記、同性パートナーを配偶者として認め福利厚生を利用できるようにする、性自認の服装や通称名の使用を認めるなどです。

マンパワーグループが実施した約5000人の当事者にアンケートでは、求職時に困難を感じると回答したLGBが40%、Tに関しては69%、約7割という結果がでました。また、職場で差別的言動があると答えた方は非当事者が40%だったのに対し、当事者は57%という結果が出ました。
この結果からはまだまだ日本のLGBTダイバーシティに取り組む企業は少ないと思われますが、今後取り組みをしていこうとしている企業は確実に増えています。

その理由の1つが、2020年の東京オリンピックです。
2014年にオリンピック憲章が改正され、差別禁止規定に性的指向が明記されました。
また、オリンピックの調達コードにも、LGBTへの差別禁止や人権を尊重することが明記されています。調達コードを守っている企業から、東京オリンピックに関わる物品やサービスなどを調達する必要があります。また、製品だけでなくその製造にかかわる関連企業もすべて調達コードを守っている必要があります。
このことから、多くの企業がLGBTフレンドリーになる必要が出てきています。

最近では、日本のメディアでもLGBTが取り上げられることが増えてきています。
まだまだ取り組みに関して過渡期であるために、賛否両論様々な意見が出ていますが、徐々に誰もが暮らしやすい社会へとなっていくことが期待されています。