セクシュアリティに言及した本 前編

LGBT当事者orアライによるレポート。今回は性と性格についてです。

今でこそLGBTという言葉や様々なセクシュアリティが存在していますが、昔はLGBT以外のセクシュアリティはもちろん、同性愛者という概念すらありませんでした。
今回は同性愛者が認識される前に、同性に惹かれる感情について言及した本を見てみようと思います。

『性と性格』

その本の名前は『性と性格』、ドイツのユダヤ系哲学者オットー・ヴァイニンガーによって1903年に書かれました。
興味深いのが、この本を出版したおよそ4か月後、彼は自殺しているところです。

同性愛は1つの章を使って触れられていますが、本の大枠は男性的形質と女性的形質、つまり現代で言うところの男らしさや女らしさとは何かについて論じている本です。

後半の章ではユダヤ人についての章もあり、彼自身がユダヤ系で、同性愛者であったという噂もあることから、本を書いていくうちに自身のアイデンティティについて考えて辛くなり自殺してしまったのではないかとの説もあります。
また極端な女性、ユダヤ人蔑視の主張であるこの本は、のちのナチスに影響を与えたという説もあります。

同性性欲と鶏姦

本の前半第四章は「同性性欲と鶏姦」と名付けられ、男性に惹かれる男性と女性に惹かれる女性に言及しています。同性愛者という語はどこにも見当たりません。

彼によれば、「男性に牽かれる男性は、どこか女性的な容姿をもち、同じように、他の女性を求める女性は、肉体的に男性の特徴を示すことが昔からよく知られている。」だそうです。

現代になって考えてみれば、この主張が間違ったものであることは一目瞭然です。当時はイギリスでオスカー・ワイルド(ゲイの作家、派手な見た目で人気を博した)が話題であったことなどもあり、このような間違った知識がついてしまったのかもしれません。

現代のオネエとの関連

上記で触れた「ゲイは見た目が女らしく、レズビアンは男らしい」という主張は、現在でも勘違いしている人がいますよね。

その例として最も顕著なのが、テレビで活躍するいわゆるオネエ系タレントだと思います。言葉づかいや見た目が女らしい彼らは、みんな筋骨隆々な男の人が好きなんでしょ?と未だに思っている人がいます。最近になって段々と変わってはいますけどね。

最後に

冒頭でも述べた通り当時は同性愛者という概念自体がなく、同性に惹かれる人がいる、と認識され始めたまさにその時代でした。
そのためヴァイニンガーをはじめ、多くの学者がその理由を研究しようと試みました。この後の時代に、「同性愛は病気、治療で治る」と言われる時代があります。

現在LGBTを取り巻く環境がいいか悪いかは一概には言えませんが、彼らが必死で研究したからこそ、現在こうやって多くの人がLGBTの活動ができているとも言えるでしょう。
ヴァイニンガーは「どんな人間にも(中略)同性愛の傾向はまったくないとはいえない。」とも書いています。
全ての人が自身のアイデンティティについて考える機会を、彼は与えていたのです。
彼が主張した男らしさと女らしさについては、また別の記事で触れようかと思います。

参考『性と性格』(1903)オットー・ヴァイニンガー