レズビアンのキャリアの難しさ

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LGBT当事者もしくはアライによる「セクシュアリティ」に関するレポートを紹介するシリーズ。
今回はレズビアンであるLGBT当事者による就職体験レポートです。
LGBT当事者は働く上での様々な困難を感じることが多いのではないでしょうか。

LGBTが置かれている現状

1日の大半を占める仕事。何の仕事をどこでするか、誰とするのかはLGBTの人々にとっても重要なことです。近頃は、ニュースでもLGBT関連の話題が発信されているので都会の外資系企業や、ベンチャー企業ではLGBTフレンドリーな企業も増えてきたと聞きます。しかし、地方などではまだLGBTの存在自体よく知られていない現状です。

レズビアンのキャリアの難しさ

特に結婚・出産をしないレズビアンの場合、企業選びは慎重になります。ストレート女性の場合は、結婚すれば法律で夫の扶養になれますが私たちはそうもいきません。パートナーがいたとしても経済的に自立していることは大事です。

働くレズビアンのロールモデルは少ない

さらに、働くレズビアンのロールモデルの少なさもあります。レズビアンとカミングアウトして働いている女性は、今のところ芸能人ばかりが目立ちます。彼女たちのキャリアは、一般社会の人とはまた別物だと考えています。だから、私たちは自分自身で見たり聞いたりしたもの、恋人、LGBTの友人たちから聞いた情報を頼りに手探りで就活をしています。

20代後半ならではの就活の難しさ

最近はアラサーレズビアン特有の悩みも出てきました。面接で「結婚のご予定はありますか?」という質問をよく聞かれます。社会人経験がある20代後半女性は転職市場では需要があります。しかし、結婚・出産をきっかけに働き方を変える人も多い時期です。だから採用担当者としては、結婚の予定を聞くのでしょう。レズビアンはその流れには乗らないので、長く勤められます。でも、そのことを伝えるにはカミングアウトしなければならないので難しいのです。

LGBTだと伝えたときの企業の反応

以前勇気を持って「パートナーが女性なので、結婚・出産はないです…」と答えました。その時の、面接担当者の引きつった表情を今でも忘れることができません。挙げ句の果てに「自分でお仕事された方が…」と言われてしまいました。それ以来、自分らしい働き方とは何なのかを自問自答しています。

LGBTだと伝えずに働く

今は、LGBTライターとして情報発信を続けています。そして空いた時間に掛け持ちで複数の企業で働いていますが、ライター活動の時以外はLGBTである事は伏せています。その方が、スムーズなのでそうしているだけです。自分は、どこの企業でなら、ありのまま受け入れてもらえるのか未だにわかりません。本当は、カミングアウトして1つの企業で長くキャリアを重ねていきたいです。しかし、その普通が難しいです。

LGBTフレンドリー企業ってどんな企業ですか?

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現状の日本社会においては、LGBTの当事者が働きにくい職場環境がたくさんあるというのは残念ながら事実です。
ただ一方で、LGBTも含めたダイバーシティを推進して、すべての人が働きやすい職場環境を実現している、あるいはそれに向けて取り組んでいる企業もたくさんあります。

LGBTフレンドリー企業の定義は明確にないので、人や企業によって捉え方は違います。基本的にはLGBT当事者の方でも特に差別をすることなく働きやすい環境をつくろうとしている企業と考えられます。

まずはLGBT当事者にとって働きやすい環境をつくろうとすること。次にそのための制度を整備すること。さらに実際の職場までその意識を浸透させることといくつかのステップがあります。

LGBTフレンドリー企業って具体的にはどこなのか?というのはなかなか分かりにくいですが、参考として東洋経済社が毎年発行している、「CSR企業総覧」という書籍には「LGBTに対する基本方針(権利の尊重や差別の禁止など)「あり」」の企業」が掲載されています。

この「LGBTに関する何らかの取り組みを行っている企業」の社数は2014年版では116社、2015年版では146社、2016年版では173社と増えてきています。
これはLGBTフレンドリー企業のうち大手企業のリストになります。これらの企業の中でもダイバーシティへの取り組み度合いは異なるので、実際にどのような取り組みがされているかや、職場環境の実態は直接聞いてみないとわからないこともあります。

また大手企業以外の中小ベンチャー企業でもフレンドリー企業はたくさんあります。一般的に大手企業は制度が整っていることが多いですが、働きやすい職場環境というのは制度だけでなく、社風にも大きく影響を受けるので、従業員数の少ない中小ベンチャー企業のほうが、働きやすい職場環境を実現できているケースもたくさんあります。

既婚者はキャリアアップ転職に有利ってホント?

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30~40代の転職において、既婚者のほうが有利という考え方があります。

「既婚者は家族がいるから簡単には辞めずに真面目に働きそう」
「結婚していない人は、まだ一人前には思えない」
「会社としては、責任のある行動ができるかどうかの判断材料の一つとする」

特に企業の経営者や人事責任者がこのような考えをもっているとすれば、その企業への転職であったり、その企業の中でのキャリアアップというのは難しくなります。

一方で既婚者より独身者のほうが有利という考え方もあります。

「独身者のほうが転勤なども含めて、柔軟な対応ができる」
「仕事に集中できる」
「今まで仕事が好きで頑張ってきたからこそ、独身のままという人もいる」

さらにセクシュアリティによっても違うという意見もあります。

女性の場合であれば、結婚や出産を機に仕事をやめてしまうのではないかと考える企業があることも事実です。
そのため採用面接の際に、結婚の予定を聞かれるケースもあります。

しかし、結婚の予定を聞かれるのはネガティブな理由だけではありません。

結婚や出産をしても働ける職場環境づくりをしている企業では、結婚の予定を聞いた上で、そのときに備えて会社としてどういうことができるかなどを相談したいという理由から、聞くというケースもあります。

そもそも、最近は初婚の平均年齢は高齢化(晩婚化)しており、また離婚率も高くなってきています。
それだけライフスタイルが多様化してきているといえます。
かつては多くの企業で見られた家族手当なども廃止する企業が増えてきているのは、企業として従業員の結婚や離婚といったプライベートにはあまり踏み込まなくなっている証ともいえます。

既婚者のほうが転職にどの程度有利か不利かは企業によって差はありますが、このような傾向はなくなってきているといえるでしょう。

現在の日本では、同性パートナーとは結婚(婚姻)することはできません。
そのため、LGBT当事者の中には結婚しないことがキャリアに影響するのではと不安に感じる人も少なくありません。

しかし本来、キャリアには結婚の有無は関係ありません。
キャリアアップ転職する際には、仕事でどれだけの成果が出せるかがはるかに大切なのです。