同性パートナーと生命保険

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ライフネット生命が
同性パートナーもOKに

2015年11月にライネット生命が日本で初めて死亡保険金の受取人に同性パートナーも指定できるようにしました。

これを契機に、続々と他の生命保険会社でも同性パートナーを保険金の受取人に指定できるサービスが開始されています。

なぜ保険の受取人は
血族のみだったのか

これまでは生命保険の受取人は原則として、「戸籍上の配偶者または2親等以内の血族」とされてきました。

生命保険会社によっては、同居の実態や戸籍上の配偶者の有無、被保険者と受取人の関係等を確認の上、個別に対応している場合もありましたが、あくまで例外対応でした。

そもそもなぜ生命保険の受取人は、「戸籍上の配偶者または2親等以内の血族」に限定されていたのでしょうか?

生命保険が必要になる大きな理由のひとつが、万が一の時にお金を遺したい相手がいるということです。


自分がメインの稼ぎ手でパートナーや扶養する必要がある子供がいる場合には、まとまったお金を遺すということが大切です。
通常はお金を遺したい相手は、普段から生計を一緒にしていることが多いので、保険の受取人は近親者に限定されているということがあります。

また、受取人を限定するのは、保険金殺人などの事件を防止するという観点からも必要とされています。

これまで戸籍上のつながりのある家族や親族にしか認められてこなかった保険金の受取人が、同性パートナーまで対象になったことは大きな前進です。

どれくらいの保障金額の保険に入るのが適切かはその人のライフプランにより異なります。
扶養が必要なパートナーや子供がいる場合には、パートナーの収入や、年齢、子供の養育にかかるであろうお金がどれくらいかを算出して保険額を考えてみましょう。

また一時的に保障が必要な場合もあります。10年とか20年とか保険期間をあらかじめ指定する定期保険がこれに該当します。
自分のライフプランにおいてどのようなイベントがあるのかなども含めて、総合的に判断をしてみましょう。

同性パートナーは
相続税が控除されない

ただ一方で、生命保険についてもまだまだ課題があります。

一つが相続税です。

日本の税法においては同性パートナーはまだ戸籍上の婚姻関係とはみなされません。
戸籍上の婚姻をしている場合には、相続において一定の税金の控除が認められますが、同性パートナーの場合にはこの控除が認められないので、その分、税金の負担が大きくなります。


二つ目が、生命保険の受取人として同性パートナーを指定できる保険会社はまだ限られていますし、パートナーが受取人として認められるための条件が各社によってきめられており、無条件で認められるわけではありません。

保険金の受取人として、同性パートナーを指定することが認められたということは大きな一歩です。これからもっとLGBT当事者の方が使いやすいサービスになっていくといいですね。

火災保険や自動車保険では初のLGBT対応

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東京海上日動火災保険株式会社が、火災保険や自動車保険において、同性パートナーを「配偶者」に含める商品を開発すると発表しました。
火災や事故の際に事実所婚姻関係と同様の事情にある同性間のパートナーも配偶者と同じ補償を受けられるようになります。

これまで生命保険に関してはライフネット生命や日本生命保険、第一生命などが受取人として同性パートナーも認めることを発表していました。
しかし、火災保険や自動車保険に関する保険商品は東京海上日動火災保険が初となります。

火災保険では契約者の配偶者の家財が焼けた場合、ほぼ自動的に被害が補償されます。しかし、これまで配偶者に同性パートナーは含まれていなかったため、持ち物が焼けても補償を受けとることができませんでした。

今回、東京海上は「配偶者」に同性パートナーも含む商品の認可を金融庁から得ました。こうした金融商品の認可取得は初めてです。
この商品は2017年1月から個人向け保険として販売する予定となっており、既存の契約者については更新時に適用されます。
制度の悪用を防ぐため、同居している事実を示す住民票を提出する必要があります。さらに、渋谷区など公的な証明書を発行している自治体以外の地域では、第三者の署名を含めた確認書の提出を求める方針です。

今回の商品開発の背景として、東京海上は下記のように発表しています。

昨年、渋谷区で同性カップルを男女間の結婚に相当する関係として認めるパートナーシップ証明書の発行を開始され、各企業でもLGBT(※)に対する様々な対応が実施されており、社会的関心が高まってきております。
このような状況を踏まえ、当社といたしましては、お客様の多様な家族形態を尊重し、お客様のいざというときにお役に立てる商品をお届けするため、同性間のパートナーを異性間のパートナーと同様のお取扱いといたします。
(※)LGBTとは、L:レズビアン(女性同性愛者)、G:ゲイ(男性同性愛者)、B:バイセクシュアル(両性愛者)、T:トランスジェンダー(心と体の性の不一致)の頭文字をとった、性的マイノリティ(少数者)を表す総称。

東京海上のプレスリリースはこちら
同性間のパートナーを「配偶者」 同性間のパートナーを「配偶者」として補償の対象に含めます

アメリカなどの欧米諸国に比べ遅れるLGBT(性的少数者/セクシュアルマイノリティ)への対応を急ぐ日本企業が増えてきました。
顧客への対応だけでなく、第一生命保険では「LGBT相談窓口」設置の他、社宅貸与など福利厚生面でも同性パートナーを認めるなど、従業員の中にいるLGBT当事者への対応を行う企業も増えています。
政治においては自民党もLGBT対応を急ぐ法案の策定に動いています。
今後もこうした動きが加速していくことが予想されます。

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この記事を書いた人

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こあせんせー
早稲田大学法学部卒のストレートアライ。
時事ネタ、法律関係が得意。趣味は将棋とモノポリー。