アメリカ、シアトルからスタートしたスターバックスコーヒーさん。多様性を尊重する企業風土は日本法人であるスターバックス コーヒー ジャパン株式会社さんでも根付いています。
実際にLGBT当事者の方もたくさん働かれているという同社で、2017年1月1日から同性パートナーシップ制度がスタートしました。制度導入のきっかけなどを、人事本部、人事部、ダイバーシティ&インクルージョンチーム、チームマネージャーの髙坂裕二さん、前田由紀さんお話を伺いました。
2017年1月1日に同性パートナーシップ制度を開始されましたがきっかけは何だったのでしょうか?
アルバイトから社員登用することになったある社員からのメモがきっかけです。
その社員は戸籍上同性(FtMトランスジェンダー)のパートナーがいます。社員登用する際の書類に「同性パートナーを家族として登録してください」とメモが添えられていました。
当社は元々、多様性を尊重する企業文化があり、LGBT当事者の方もたくさん活躍しています。そのため、この社員は「スターバックスは同性パートナー制度がある」と思い申請を出したようです。
当たり前のようにさりげなく添えられたメモが、さりげないからこそ、響くものがありました。
LGBT当事者の方が自然に存在している企業ではあるけれど、制度としてまだ不十分であることを改めて考えさせられ、これがきっかけとなって同性パートナーシップ制度を導入することになりました。
▲「世界一美しいスタバ」として有名になったスターバックス富山環水公園店
同性パートナーシップ制度の導入はどのように社内に発信されたのでしょうか?
社内への制度導入の発表はトップメッセージを添えて2017年1月4日にイントラネットで行いました。
社内制度に関する連絡などの業務連絡は、イントラネットを通じて行っているのですが、同性パートナーシップ制度もそのひとつとして、特別に扱うことなく発信しました。
特別に扱うことで、逆にスポットライトを浴びてしまうのではないかという考えからです。
同性パートナーシップ制度は、2017年1月4日より以前から、検討中であることは社内に発信していました。
2016年9月に全国の店長、エリアマネージャーが集まる会議でのCEOからの発信の他、半期に1回開催される「会社をよりよくするための提言をしたい」と考える社員が自ら手を挙げて集まる会議でも発信しました。
同性パートナーシップ制度を導入されて社内の反応はいかがでしたか?
同性パートナーシップ制度を開始してすぐに4人から申請がありました(2017年2月時点)。
そのうちの1人は、制度導入のきっかけとなったメモを添えてくれた社員でした。
申請があった4人以外からもよいメッセージを頂きました。
LGBT当事者の方から「勇気が持てた」という意見もありましたし、スターバックスでの勤続意欲が上がったといったような意見もありました。
ポジティブな意見が多かった理由のひとつは、スターバックスにはMission & valuesが浸透しているからだと思います。
この中には「お互いを心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります」という一文があります。この「誰もが」という部分に社員は共感してくれているのではないかと思います。
▼Mission & values
スターバックス コーヒー ジャパン株式会社コーポレートサイトより
同性パートナー申請にはどのような要件がありますか?
当社の法務部門や弁護士とも相談した結果、結婚した際に行う家族登録で求めている以上の要件は求めないとなりました。
当社の同性パートナーシップ制度の目的は、日本では合法化されておらず結婚できない同性カップルが、結婚できる異性カップルと平等の待遇が受けられるようにすること、「公平である」ことを第一に考えているからです。
第三者の承認も不要としているので、その代わりに申請できるのは20歳以上としています。
また、申請があった社員とは、必ず面談をするようにしています。
制度の理解を深めることや、本人の希望をきちんとヒアリングすることを目的としています。
例えば、同性のパートナーを家族として登録した社員が結婚休暇を取得する際には、結婚をしている社員と同じように手続きを行います。手続き上、同性パートナーがいるということが関連部署に知られてしまうことがあるので、カミングアウトはどの範囲で行いたいのかなどを確認しています。
申請を受領した際には受領証を発行しているのですが、同性カップルの方は結婚が合法化されていないので、家族として登録したことを署名する書類にとても喜んでくださる方もいました。
▼実際の同性パートナーシップ登録申請書と、受領証
登録が受領されると、代表のサインと社印が押印された書類が社員に渡される。
最後に今後についてお伺いできますでしょうか?
制度を導入しただけでは終わらせたくはないと考えています。
LGBTの正しい知識と理解を促進するための社内研修を実施していますが、今後もLGBT当事者の方が働きやすい環境を整えるためのこのような活動を広げていきたいと考えています。
編集部より
LGBT当事者だけに限らず、多様なバックグラウンドを持つ方が活躍されるスターバックスさん。
誰もが働きやすい職場だからこそ、居心地よい空間をお客様に提供できる素敵な店舗展開が可能なのではないかな、と感じました。
インタビュー時に訪問させていただいた本社オフィスもとっても素敵でした!