同性婚が認められていない日本において、同性カップルはたびたび法律上の壁に直面します。
その大きなひとつが、遺産相続の問題です。法的に結婚関係にない同性カップルがお互いの遺産を相続したいと考えたときに、そこにはどんな障害があって、どんな対策が取れるのか。
代表的なケースについて、考えてみましょう。
日本の遺産相続制度
まず、日本における遺産相続制度について見てみましょう。
遺言などが何もない状態で半自動的に遺産を受け取ることができる人を、法定相続人と呼びます。
一番優先されるのは配偶者で、全体の半分以上を受け取ることができます。次が直系の子どもや孫、さらに直系の父母や祖父母世代、兄弟姉妹と続きます。特に問題がなければ、遺産は彼らに順次配分されます。
しかし、同性カップルの場合、パートナーはこのどの枠にも入ることができません。同性婚のシステムがない以上、パートナーは法的な配偶者にはなりえないのです。
なので、法的結婚関係にないカップルは、また別に手段を講じる必要があります。
遺言を書く
遺産相続において、法定相続人よりも優先されるのが遺言書の記述です。遺言書に名前と分配分を書いておけば、法定相続人ではない相手にも遺産を相続することができるのです。
他にも生前贈与を利用したり養子縁組を行うなどの手段が考えられますが、同性カップルがパートナーに遺産を分配したいと考えた場合、この方法がもっとも確実かつ手軽であると思います。
その上で、注意すべきことは大きく2点です。
まず、同性のパートナーは正式な配偶者ではないため、相続税の控除を申請できないこと。2016年現在、婚姻関係にないパートナーへの遺産は単なる遺贈とみなされ、相続税がかかるようになっています。
もう1つは、遺留分を考慮しておくことです。
遺産には、法的相続人が最低限相続できると決められている遺留分が存在しており、それは遺言書の適用範囲外とされてしまいます。親兄弟に理解があれば話がスムーズに進むかもしれませんが、もしパートナーに対して理解をしてもらっていなかった場合、争いの元となる恐れがあります。
そのことも考慮し、遺留分を考慮した遺言書をあらかじめ作成しておくなどの対策が必要になってきます。
法的な壁を、できるだけ超える努力
同性パートナーを中心に、LGBTカップルには様々な法的な壁が立ちはだかっています。制度の改正がなされるのが一番の解決ではありますが、まだまだそれは難しい話。なので、それらをできるだけかわしていく手段を考えることがパートナーとの幸せの近道になるのです。